2 赤ちゃんの作り方を思い出させて
俺とアサは人間だけど、カオスチャオとほとんど同じだ。
人間は不老不死に憧れる。
だから実際に不老不死であるカオスチャオの要素をどうにか人間に移植しようと研究が行われていた。
その人体実験に使われたのが俺とアサだった。
実験は成功だった。
俺とアサは死ななくなった。
それなのに、なぜかこの技術は世に出なかった。
研究者たちは不老不死への関心をなくし、研究は打ち切られた。
そして人体実験の事実を消すために俺たちはこの島に送られたのだった。
腑に落ちないことは色々あるが、しかし現実として俺たちはこの島に隔離されている。
この謎について考えてみることはある。
しかし想像から真実がわかるはずはない。
そしてどんな真相もこの島の生活には関係なかった。
「ヨルの、また大きくなってる」
情欲をかき立てるように俺の体をゆっくり柔らかく愛撫していたアサは、嬉しそうに言った。
そしてキスをすると彼女の唾液が俺の口の中に注がれた。
これを精液の材料にしてほしい、とねだるかのようだ。
興奮のために体が勝手に動き出す。
「お願い、もっと激しくしてっ。私のお腹に、赤ちゃんの作り方を思い出させて」
とアサは言った。
俺は動きを強くした。
そうしたからと言って、生殖機能が復活するはずはなかった。
しかしこれが子どもを欲する俺たちにできる唯一のことだった。
やがて俺たちは互いに快楽を貪るだけになった。
この島にいるカオスチャオたちはみんな捨てられたチャオだ。
チャオをペットとして飼うことが流行った時代があった。
飼い主からとても愛されたチャオは転生し、そして限られたごく一部のチャオはカオスチャオへの進化を果たした。
だけど流行が去るとチャオたちは転生できなくなった。
飽きても飼い主として責任を果たそうという人はたくさんいた。
それでもかつてと比べたら、注がれる愛の量はぐんと減ったのだった。
流行していた頃は、付き合い始めたばかりのカップルのように飼い主は始終チャオにくっついていたものだった。
そんな時代が来ても、カオスチャオは死なない。
飼い主がチャオを飼育する費用を負担に思ったり死んでしまったりして、カオスチャオを手放した。
チャオが幸せに暮らせるであろう場所に送ってやる。
それが飼い主の最後の責任で、そうしてチャオが送られた場所の一つが元チャオガーデンのこの島だった。
全て昔々のお話だ。
俺とアサの物語も、チャオたちの幸福な時代も。