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ぽつり、と彼の頭に雫が落ちてきました。

ミラル「ありゃ、バレてたかー、さっすがナゾナゾ!…ん?」


ぽつ…


ぽつ…ぽつり……


ナゾナゾ「おや、雨ですか」
マヌケ「ねーあの木の下で雨宿りしようよぉ~」

3人は近くの木の影へ入りました。


さぁぁぁぁぁ……


ミラル「あーあ、大雨じゃんかー」
ミラルは大きな溜息をつきました。
ナゾナゾ「何溜息なんてついているんですか。あ、それよりもどうして私達の後をずっとついてきたんですか?」
ミラル「え…えぇっと、それはですね……」

特に意味も無くついてきただけなので、説明がつきません。
ミラルが回答に悩んでいると
マヌケ「ねぇ~、問題の答えおしえてよぉ~」
隣からマヌケの声がしました。

ミラル「ん?問題?…ナゾナゾ、あんたが出したの?」
ナゾナゾ「えぇ、そうですよ」
ミラル(…理由をでっち上げる時間が欲しいな……問題出してもらうか)
問題を考える時間を理由を作る時間にあてようという事でした。

さぁぁぁぁ……

ミラル「それってどんな問題?」
問題を出すのが好きなナゾナゾです。多分自分にも同じ問題を出してくれるでしょう。
考えるふりをして実は解こうとしないわけですから、ちょっと悪い気はしますが、仕方ありません。

ナゾナゾ「こんな問題ですよ」
案の定、ナゾナゾはミラルにも問題を出してくれました。


(2x−1/4)(3x+1/8)=0

この式で、xに当てはまる数を全て答えて下さい。


ミラル「…へ?計算問題??」
ナゾナゾ「そうですよ、何か問題でもありますか?」
ミラル「…い、いや……何も無いけど」
いつもならもっと難しい雑学系の問題を出してくるナゾナゾが、ただの計算問題を出してきたので、ミラルは驚いてしまったのです。

ミラル(どーすっかなぁ……これじゃあんまり考えなくても解けちゃうじゃんか…)
とりあえず少しでも時間を稼いで、早く理由を作る他はありません。
ミラル「うーん……」
ナゾナゾにも不自然に思われない理由を、ミラルは考え始め


「…ん?」


ようと思ったところで、遠くから声が聞こえてきました。
マヌケ「ん~?誰?このこえ」
ナゾナゾ「はて…知らない方が歌っているようですね」

さぁぁぁぁ……

雨の音に混じって、綺麗な歌は流れています。
ミラル「へぇぇ……こんな歌があるんだな」
ナゾナゾ「聞いたことの無い歌ですね」
初めて聴くその旋律に、3人は聞き入っていました。


「―――‥…」


歌が終わって、聞こえるのは雨音だけになりました。
マヌケ「すご~い」
ナゾナゾ「優しい歌でしたね」
ミラル「うん、上手だった」

少し小降りになった雨の中を、3人は再び歩き出します。

ナゾナゾ「ところで、答えは分かりましたか?」
ミラル「ん?…あぁ、分かったよ、『1/8、−1/24』だろ?」
ナゾナゾ「はい、正解です」

どうやら二人とも、ミラルがナゾナゾ達の後をついてきた理由を聞くのも答えるのも、忘れてしまったようです。
ナゾナゾは元から、それほど気にはしていなかったのです。
あの歌のせいで、ミラルは忘れてしまったのかも知れません。

3人は、西の森への帰路を辿っています。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第293号
ページ番号
28 / 33
この作品について
タイトル
ガーデンのヒミツ
作者
神崎揚羽(紅黒梓)
初回掲載
週刊チャオ第266号
最終掲載
週刊チャオ第312号
連載期間
約10ヵ月19日