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アイラ「このくらいでいいです、ありがとうございました!」
赤い実の沢山入った籠を持ちながら、アイラは言いました。
アイリス「お疲れ様ー」
ウォーター「お疲れ」
二人は、さて、とどこかへ歩いていこうとしました。

「お~い!」
「アイラー、いるの~?」

誰かの声が聞こえました。

アイラ「あ、ゼードさん、リサナさん!」
アイラの知り合いのようです。
ゼード、リサナと呼ばれたチャオは、こちらに一直線に走ってきました。
ウォーター「ゼードとリサナと言えば…あのありえねぇ腕力だっていう…」
アイリス「ウォーター君、知ってるの?あのチャオ達の事」
ウォーター「あ、ああ。あいつらは物凄く腕力があって、掴まれた奴は一瞬でぺちゃんこになるとか…」
想像しただけで怖そうです。
ウォーターとアイリスの額に冷や汗が浮かびました。

ゼードとリサナは、3人のいる所にたどり着くなり、アイラに話しかけました。
リサナ「一人で木の実取り来たんだって?手伝ってやろうか?」
アイラ「あ、ううん、もう取り終わったから大丈夫、ごめんなさい」
ゼード「随分早いんだな、どうやってそんな高速で木の実取る術を覚えたんだ?」
普通アイラの出発した時間を考えれば、早くて籠の半分程しか取れる訳がありません。
それこそ3倍速で動くとか、そんな超能力的なことが出来なければ終わるはずが無いのです。
アイラ「あの二人に手伝ってもらったの。お陰ですぐに終わったわ」
アイラは後方で3人のやり取りを見ていたアイリスとウォーターを指しました。
ゼードとリサナは、二人の方へと歩いて行きました。
そのことに気づいた二人は、互いに目を見合わせるばかりで、何があったのかが分かりません。
アイリス「…あの、何でしょうか?」
ゼード「アイラの事を手伝ってくれてありがとう」
リサナ「代わりにあんた達の事を手伝いたいんだが、何かあるか?」
アイリスとウォーターは、噂よりもずっと優しい二人の様子を見て、暫くきょとんとしていました。
アイラ「あの、二人ともどうしたんですか?」
アイリス「えっ?あ、何でもないよ!えーっと、そうですねぇ…」
アイラの声で我に返った二人は、手伝って欲しい事を考えていました。
けれど、今手伝って欲しい事と言えば、一つしかありません。
言うべきか言わざるべきかと考えていると、先にリサナが口を開きました。
リサナ「いや、特に無ければいいんだ。ただ暇だったから何かあったらと思っただけだから」
ウォーター「ん?暇なのか?だったら…」
ゼードとリサナは北の森の集落に住んでいます。リリカの事を告げても問題は無いはず。
ウォーター「今、迷子を捜しているんだ。一緒に探してくれないか?」
ゼード「迷子?いいぜ、手伝ってやるよ」
リサナもいいよー、と言っています。
アイリス「ありがとうございます!じゃあお願いします」

その会話を聞いていたアイラは、自分が木の実取りを手伝って貰ったことを後悔しました。
彼女達は、大事な用事があったのに、自分のせいで中断させてしまった…。
そんな思いが、アイラの中にありました。
アイリス「あれ?どうしたの?」
彼女の様子にいち早く気づいたのは、アイリスでした。
アイラ「い、いえ…迷子を捜さなきゃいけないのに、木の実を取るの手伝ってもらっちゃったから…」
アイリス「ううん、気にしないで。友達も他のところを捜してくれてるし、それに迷子がここに来るかも知れないって思ったし」
アイラ「はい、すみません…ありがとうございます」
アイリス「アイラも捜すの手伝ってくれる?」
アイリスの気遣いを、アイラは嬉しく思いました。
アイラ「勿論!あ、でもこの籠を置いてきてからでいいですか?」
アイリス「うん、いいよー」
ゼードとリサナが来た方向に向かって、アイラは大急ぎで飛んで行きました。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第274号
ページ番号
22 / 33
この作品について
タイトル
ガーデンのヒミツ
作者
神崎揚羽(紅黒梓)
初回掲載
週刊チャオ第266号
最終掲載
週刊チャオ第312号
連載期間
約10ヵ月19日