6個目





「・・・アンタ、とうとうおかしくなっちゃったの?」

まぁ、何とも言わない。素直で率直な意見だ。

「あのね、小学生時代あたりの記憶なら君の頭の中で納まってる物で間違い無いだろうけど、それ以降は君と違うと思うんだ。」
「それが、今の話?」
「そう言う事。」
「・・・良く理解出来ないんだけど、皆チャオになってるの。・・・あたしも、アンタも。」
「うん。それに、刃や春実や美希も。皆チャオ。」
「何だか良く分からないけど、まぁいいわ。今アンタは、いつものアンタじゃないって思えばいいの?何となく興味深いわね。」

そのいつものアンタじゃないがどんな意味を持つのか。単純におかしいとかだったら泣くぞ。

「・・・じゃあ、どうしよっかな。」

何が。

「あたしね、いつものアンタに渡したい物があったんだ。」

何を。

「コレ。」

何だ。

「いつものアンタに渡したかったけど、いいわ。ちょうど良い所に、今しか渡せない相手がいるんだし。」

だから何をだ。言ってみろ。

「チョコ!」


―――瞬間。僕の頭はオーバーヒートどころか、見事にエンジンブローを起こしてしまった。今新しい思考回路に取替え中である。
今何と言った?チョコ?まさか本命じゃ無いだろうな。どうする?断る理由が無い。いやいや、本当はあるが言ったら殺される。

「・・・好き、だったからさ。迷惑?」

迷惑もへったくれも無い。たった今エンジンブローを起こした僕には何も言えない。

「これからアンタがどうなるのか、ずっと見てあげたいけど・・・あたしが見る資格無いもん。」


・・・別れの言葉もかけずに、光は去った。



















どれほど経ったのだろうか。ようやく思考回路の取替えが完了した。・・・機械にでもなったのか、僕は。
とりあえず、今僕がいるのは公園のベンチだ。僕が持っている道具は確か、光のチョコと美希のチョコだ。春実のも抑えたかったが、だから何だ。
仕方ない、とりあえずチョコでも食べようか。とりあえずチョコを取り出した。




驚いた。入れ物が同じである。更に中身を見れば全く同じ形のチョコであった。コレは偶然なのだろうか。
さて、どっちから食べようかな。・・・と、そこでいきなり思考回路が詰まった。

本当に、どっちから食べよう?

いや、普通だったら悩まないが、何故かこの選択肢を誤れば今までの苦労が全て終わる気がする。一体何なんだ、この状況は。
と、ここで事件発生。悩んでしまった為、どっちが誰のチョコか忘れてしまった!面倒になった気がするなぁオイ!

1 ???のチョコを食べる。
2 ???のチョコを食べる。
3 逃げる発動。

どこに逃げればいいんだ。
そもそも選択肢になってない。きっと作り方などもそっくりそのまんまなのだろう。価値観ではアテにならない。お金で買えない価値がある。買える物はマス○ーカードでっ!って、何も買わん!
・・・くそっ、ヤケクソだっ!

???のチョコを食べる。
それ以外に道は無いっ!どっちの道かは知らんが、食うしかないっ!

もう、僕がどのチョコを選んだのかすら分からなくなった。右のチョコ?左のチョコ?そんな物知らん。
ただ、初めて渡されたバレンタインチョコレートとやらの味を知る事だけを考えて、僕はそのチョコを口にした―――――

























このページについて
掲載号
週刊チャオ第257号
ページ番号
7 / 8
この作品について
タイトル
外伝事務所 ―バレンタインに訪れた「forked road」―
作者
冬木野(冬きゅん,カズ,ソニカズ)
初回掲載
週刊チャオ第257号