5個目

もう少し詳しく聞いてみようか。
それがいい。他の選択肢を選んだらそこで僕は終わるかもしれない。

「ゴメン、何回か同じ事あった気がするからもうちょっと詳しくっ。」

我ながら何となくしどろもどろな質問だ。

「ほら、唯一一緒に下校してたじゃん。そのチャオ、少しだけ追っかけて、それで変な駐車場にその2匹が入っちゃったよね?」

・・・駐車場。その単語を聞いたとたん、妙な言葉が頭に浮かんだ。






―大体あんたの好奇心のせいでこんな所にいるんだからね?





好奇心、か。これも重要なキーワードの1つである。いや、今の言葉こそ見事に僕に電流を走らせ、頭のエンジンを回転させ始めた。
あの時から始まったんだ。僕のトンデモ生活が。しかし、ココで矛盾が一つ浮かび上がった。

追いかけなかった。

そんなハズは無い、僕はそのチャオを追いかけ、そしてあの事務所で生活する事になった。しかし、光は何と言った?追いかけなかった?どういう事なのだろう?

「もし追いかけてたら、どうなったと思う?」

追いかけたら?それは勿論、僕はチャオになり、ヤイバやハルミと出会い、一時期警察に追われたり、そしていざこざを起こしたり。何より、事務所で生活している。
そう、追いかけたらそうなるのだ。


―待てよ。


そこまで考えて、僕は思考回路を変更させ、サイドブレーキを使って180℃回転のドリフトを決め、もう一回元来た道へと走り出した。
追いかければ、あのハチャメチャ世界での生活が繰り広げられていた。しかし、この世界ではどうだ?
僕は、追いかけなかった。そこで繰り広げられた世界が、ココだ。そう、ココは別の『運命』を辿った道である。
僕の知っている世界では、とある場所で、8匹のチャオが一緒に生活するあの世界。
この世界は、5人の人間が、平和に時を過ごすという。

ココが、追いかけないという選択肢を選んだ僕が生活する世界なのだろうか。

これで全てが明らかになり、頭のエンジンがフルの一万一千回転となった。

1 全て話す。
2 何となく言ってみる。
3 そんな事聞くなと怒ってみる。
4 何も言わない。
5 逃げる発動。

・・・また逃げるが入ってるよ。
ある意味全てを吐き出した方がスッキリするのだが、言ってもいいのだろうか。何も言わないのだけは嫌だが、話していいのか。それなら2が一番であるが、何となく引け目を感じる。
だからって3なんて選べば全てがパァだ。逃げるか?いや、逃げたら確実に首吊り用ロープが手に持たれているはずだ。まず、一番分かりやすい事にしてみよう。

何となく言ってみる。
さて、思いついた事を言ってみよう。

「多分、とんでもない事になってるんじゃないかな。」

これが一番簡潔な答えだ。しかし。

「とんでもない事って何?」

・・・どうする?どーすんの俺!ライフ○ード!続くなと言ったろー!

1 誤魔化す。
2 降参する。
3 黙る。
4 怒る。
5 逃げる発動。

・・・こうも逃げるが使えると、使いたくなってしまう。が、使わない。
さて、ここまでくれば心理戦だ。誤魔化せば例え相手が人間の光でも、ヒカルなのは確かだ。ハリセンなんか無くても強烈なツッコミを喰らうかもしれない。
黙っても何にもならないし、怒ってもしょうがない。では降参したらどうなるのか。
・・・そう言えば、こんな言葉をゲームで聞いた事がある。

―発想の逆転

伏字も糞もない。こう言う時に使うのがコレなのだろうか。じゃあやってみよう。何を逆転させるか。
そうだな、光は何故僕を問い詰める?これを逆転させるとどうなる?




―光は僕をどうしたのだろう?




ちょっとコジツケかもしれないが、考えてみよう。そもそも僕をどう思っているのか。わざわざ2人っきりになって聞きたいのはコレだけなのだろうか。それだけに呼び出したのか。
いや、光が聞きたい事を聞くときはそのまま普通に聞くハズだ。呼び出すなんてしない。・・・もしかしたら。

この世界の光は、僕が好きだったりするのだろうか。

しかし困った。つい先程87.9%率本命チョコレートを貰った所だ。いやいや、それは置いといて。
好きになってくれる子がまたココにいたんだ。僕がしてあげる事はなんだろう。




降参する。
それしかない。その先が待っている道が何だろうと、堂々と歩いていってやろうじゃないか。僕はもう3/4ヤケだった。

「・・・コレから話す事、全部信じてくれる?」
「え?」

目を丸くしてきた。・・・ここからが本当の戦いなんだろうか。

「実は・・・僕はね、今君が知ってる僕じゃないんだ。」




それから、どれほど時間が経ったんだろう。全て打ち明けた。そこで出てくるのが黄色い救急車でも構わない。
光がどんな顔をしているかなんて気にもならなくなっていた。ココで全て吐き出して、楽になってみよう。それで光がどんな反応を示そうが、構わない。



―そして、全てを話し終わった。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第257号
ページ番号
6 / 8
この作品について
タイトル
外伝事務所 ―バレンタインに訪れた「forked road」―
作者
冬木野(冬きゅん,カズ,ソニカズ)
初回掲載
週刊チャオ第257号