3個目
とりあえず、そういう問題は置いておこう。一番の問題を追及すべきだ。
ココは一体何なのだろう。何故僕はココにいるんだ。いや、ココという表現もおかしい。とりあえず、この世界は一体なんだ。
僕達が皆人間で、しかも3年程進んだ世界。・・・じゃあ、単純に言うとここは未来?いや、それだと矛盾する点が沢山ある。
まず、事務所があるはずだ。ちょっと無理矢理な考えではあるが、あの事務所が無くなる理由は何も無い。
次に、春実が僕を兄と知っている事である。ついさっきの考えもそうなら僕はとっととあの世行きである。
それと1つ。そもそもココに来るキッカケが何も無い。来る理由が無いんだ、とっとと帰らせろチクショウ。
いや、来る理由が何かあったのかもしれない。それを探さないで何になる。・・・そういえば、今日は何の日だっけ。・・・『バレンタイン』、だ。
何だ?ひょっとしてチョコを貰うが為にココに来た事になるのか?下らな過ぎる。
・・・しかしコジツケリユウとしては考えられてしまう。じゃあそれを前提に考えてみよう。
僕は誰からチョコを貰うのだろうか。まぁ、パターンとしてはこの部の女子。つまり、光、春実、そして美希の3人がいる。
しかし、妹から貰う理由は全く無い。後の2人なら否定する可能性は多分無い。
って待て待て待て待て待て。何を考えているんだ。マジメな話からチョコに移ってないか?何がしたいんだ、僕は。
本当にチョコを貰う為ダケなら帰らせてくれ。頭がチョコ漬けになっちまう。
「・・・どうしたの?」
「ぇあっ!?」
思わず奇声をあげて椅子ごと倒れてしまった。いきなりさは変わらないのか、美希。
「あ、大丈夫?」
「何アンタ?まだ寝惚けてるの?」
「いや、断じて違う。」
「変なのー。お兄ちゃん何かあった?」
いや、そう質問責めされてもしょうがない。まだ整理中なんだ、あまり驚かさないでくれ。驚く理由も無いが。
結局その日、何をしたかも頭に入らないまま考え続けていた。ただ、1時頃、そんな僕をずっと気にしていた美希が声をかけてきた。
「・・・ねぇ、一真君。」
「ん?」
「どうかしたの?病気?」
「いや、多分病気じゃない。別の意味の病気っていうか、とりあえず、一部を除いて正常だ。」
何を言ってるんだ、僕は。とうとうチョコ漬けになっちまったか?
「まぁアンタが平気だっていうなら構わないけど、かなり変よ?」
「お前に言われても仕方ないだろう。それで治ったらありがたいね。」
治療法なんてある物か。たった一つ、帰る事を除いては。
「さて、下手に何も成果挙げないまま続けても仕方ないわよね。今日はもう帰る?」
「うーん、どうするよ、一真?」
「え?あ、うん・・・。」
「・・・・・。」
何人からか、僕は視線を浴びていた。
という訳で、そのまま解散という事になった。有難いと言えば有難い。あのまま視線を浴び続ければ、その内首吊り用のロープでも探し始めるかもしれない。
ただ、その後美希に一緒に帰らないかと誘われた。断る理由も無い。いや、本当はあるのだが、言った所で納得出来るものではない。
「・・・・・。」
「・・・・・。」
・・・どうやら無口といえば無口な性格である。オマケに内気な性格と来たもんだ。こっちまで何を言えばいいのか分からない。
こっちまで無口が移る。いや、移らなくても黙らざるを得ない。今僕が受けている受難を明かせば黄色い救急車に運ばれる。
「・・・今日、どうしたの?その、凄く変だよ?」
その単語を何回聞いた事だろうか。覚える気にもならない。
「何でもないよ。」
全くその通り。何でもない。本当に何だろうか。何でもない。何と称せばいいのか分からない。だから何でもない。そんなループな考えを誰が理解するのだろうか。よく聞き取らなければだろうな。
「・・・一真君がそういうなら、まぁ・・・。あ、そうだ。」
と、美希がいきなりポケットに手を突っ込んだ。・・・まさか。いやそんなハズ無いだろう。と、僕の期待は当たったのか外れたのか全く分からなかった。
「コレ・・・皆の前で渡せないし。」
そう言って美希が渡したのは何と。せいぜい80年は愛されてきた、ポリフェノールを多く含む食品の一つ、チョコレートで作られたチョコレート!
いや、簡潔に言おう。なんと、バレンタインチョコを渡されてしまった!これは何だろうか、義理か?義理であってほしい。知ってる人だが初めて会った相手だ。いきなり本命渡されても困るっ!
「えぇーっと・・・コレは・・・何だろう。」
「えっと・・・自分で考えて。」
やめろーっ!そうなると、いや、信じたくは無いがせいぜい87.9%の確立でこのバレンタインチョコは本命と言う名の兵器となり、僕の脳を破壊する事になるっ!
「・・・前から、言えなかったんだ。コレぐらいしか出来ないけど・・・喜んでもらえるかなって。」
「あ、うん。ありがとう。」
「それでね、いろいろ聞いておきたい事があるんだ。」