2個目
街中は、僕の記憶の中といくつか矛盾する所があるが、雰囲気や町並みとしてはいつもと変わらない。
そういえば、事務所はあるのだろうか。流石に気になってくる。とりあえず、記憶を探ってみる。そこに編集部があるから、この辺でも見えるのだが・・・どうやら無い。
何でもいい。とりあえず学校だ。・・・そういえば付属高校となるとかなり凄い事になりそうだ。
僕が記憶している高校はトンデモ学校なハズだ。それで僕が生きているとなると結構大物なのかもしれない。が、光が生きているんだ。普通なのか。
そういやさっきから街中を歩くチャオ達を良く見かける。これで普通なんだよなぁ、ココは。所々でソニックやテイルスも見かけたし。
そういえば第一期の世界で活躍したチャオも見かける。が、あまり目立っていない。どうやら第二期で間違い無いらしい。そういえば僕は現実世界というものを知らないな。どういう場所だろう。・・・考えても意味が無いが。
で、付属高校到着。人間もチャオもわんさかだ・・・と思ったら、あまりいない。と、誰かが近寄ってきた。・・・光らしい。
「遅い!いくら今週がバレンタインウィークで休みだからって気が抜け過ぎ!」
ばれんたいんうぃーく?つまりバレンタイン週間か?そんな休日週間なんてあったのか、この学校は。
「木更津君も春実ちゃんも美希ちゃんもいるから、早く!」
・・・へ?今何と?
木更津、それと春実という人物については処理出来た。ヤイバとハルミだろう。が、1人処理に手こずった。
・・・美希、である。僕が記憶しているのは、あのミキだ。組織に作られた、ヒカルの情報を受け継いでいる、人工的なチャオ。
そのミキが人間となっているのだろうか。そんな事を考えながら、そのまま光に引っ張られながらとある部室らしい場所にたどり着いた。
『別世界調査部』
・・・どう言う事だ。
「遅かったねー、30分オーバー。」
「やっぱりお兄ちゃんに1人暮らしは早かったね。もー。」
刃がいた。どうやら春実も普通に登校出来るらしい。という事は春実は高校1年で、他は僕を含めて2年と言った所か。・・・1歳違いの兄妹だったんだよな。
あの頃を思い出すとゾッとするね。だがしかし、春実はまだ記憶喪失なハズだ。何故お兄ちゃんと呼んでいるのだろう。どう考えてもおかしい。
春実が僕をお兄ちゃんと呼べるのなら、その前にすでに僕は春実に殺されてるハズである。何もかもがおかしい。ひょっとして左脳で考えてはいけないのだろうか。
が、右脳というのはキッカケが無いとなかなか動いてくれない物だ。想像するにはまず情報を聞いてから整理した方がいい。が、聞けないのも事実だった。・・・何も出来ないじゃん、僕。
「あれ?美希はどうしたの?」
「ああ、美希か?ついさっき『自分のクラスから本取ってくる』って言って出てったよ。」
「ふーん。好きねぇ、本。」
ふむ、読書家なのは変わらないらしい。と、そこへ。
「ゴメンね。本をどこにやったか忘れちゃって・・・。」
その人を見て、僕は目を疑った。
「へーきへーき、あたしも今一真を連れてきたトコだし。」
「あ・・・そっか。遅かったね。」
・・・人間である。見事なまでに美希は人間であった。僕は一体何を見ているのだろう。
「あ・・・もうバレンタインだったね、今日。」
「そうだねー。お兄ちゃん、ひょっとして今日遅刻したのって、チョコでも貰ってたの?」
「バカ、僕が貰う訳無い。」
「あのね、一真の奴ったらお昼までずっと寝てたのよ。チョコなんて夢の中で食べてきたのよ、きっと。」
「そうかそうか、もうちょっと寝ても良かったんじゃいのか?」
嫌らしい性格だな、みんな。
「さて、皆チョコでも作ってたりする?」
「えー、あたし作ってないよー?」
「何聞いてんのよ、そんなの誰にも言うハズ無いでしょ?」
「ちぇっ、ガード硬いな。美希は?」
「えっ・・・今年はまだそんな気無いよ。」
「あ、じゃあ美希ちゃん作ろうかとか思ってるのー?」
「どうかなー、渡す相手もいないし・・・・・。」
とか言って、美希がちょっとこっちをチラ見した気がした。気のせいだろうか。
「そうねー、あたしもちょっと考えてるけど。相手が相手だし。」
・・・何となくその矛先がこっちに向けられた気がした。
こうやって整理してみると、まず性格は判断出来た。
光は気が強く、でもツッコミが無い。何となーく上の立場な女子高生。
刃は今までの堕落っぽい性格が無い。雰囲気作りが得意なムードメーカー。
春実は敬語を使わない、おとなしさが少し無くなった明るく元気な妹。
美希は完全無口でも無いが口数少ない、内気な読書家。
・・・明らかに僕の知ってる性格そのものではない。いや、何となく面影はあるかもしれないけど。
で、肝心の部活動の内容も気になる。どうせ名前通りの活動をするのだろう。