<27> A-Pre つづき。
「と! いうわけで~」
トラックをひとつ占領して、やる気無くMealはつぶやいた。
「いいっすか~、最低でも8匹中5位以上に入らないとランナーのポケットには賞金が入らないと思ってくれっす~」
「? 何でだよ?」
「6位以下のちゃちな賞金じゃあ、殆ど事務所側、つまりは俺や所長んとこに入る分しかないんっすよ~」
その事務所側ってのはどうせ飲み代だろ、とLiltaに耳打ちしたが、
流石にそこまで悪代官じゃないです、との答えが返ってきた。 どこの事務所でも大体同じらしい。
「A-Preでも新人が上位入賞するのはだいぶ厳しいっすからね~」
「・・・・A-Pre?」
聞き返すと、真顔で二匹に見つめられた。
悪かったな、何にも知らなくて!!
「・・・A-Preっていうのは、新人ランクのレースのことです。 まず最初にこれで走らないと、本戦に出れないんですよ。 倍率は全走者2.5倍で、賞金は少ないですが5位以上入賞で本戦のA-Stan─通常ランクに出場できます。 それと、A-Preではそのランナーの今後一年の倍率も順位によって大まかに決められるんです」
「・・・えーと、ともかく5位以上じゃないと賞金も俺の手に入らないし通常ランクにも出れないって事か?」
「そうっすね~、まあ3,4位ぐらいは取れると思うっすけど」
そういえば聞いたことが無いわけでもないが、
学校の授業でもAなんとかだとかいうアカデミックな話はぜんぜん聞いていない。
筆記が無いから別になんとかなったし・・・いやあ、俺って本当に後先考えてないよな。
「ともかく、A-Preで好成績を残すと稀にスポンサーと仮契約が結んでもらえるんっす。 ウチの目標はそれぐらいっすから、ビシバシやるっすよ~」
Mealは拳を打ち付け、にやりと笑った。
やる気のなさそうだった銀色の半目が、シャークマウスに呼応するようにギラリと鈍く光る。