<21> 帰ってきたアイツ つづき。
「え・・・・・っと、おい、じゃあちょっと待てよ、Fliaを追い出したのは・・・」
「んー、息子か・・・いや、嫁の方じゃろ。 あの子はキツイからの~」
へなへなと力が抜けた。 誰かが騙そうとしたわけじゃないが、でも騙された気分だ。
新発見だ。 Fliaのあの性格は、母親譲りだったのか。
「教育方針が気に入らないから、家を出てきたそうですよ。 守越さんと知り合いだったとかで・・・」
Liltaが後ろから説明を入れる。 案外頑固じじいなんだな。
「Fliaちゃんって言うと、5匹姉妹の長女でしたよね」
渡良瀬からも情報が。 げ、あんなのが他に4匹も居るのか?
「あとは男が・・・・えーっと、4匹か?」
・・・・・流石名門。 奥さんも黒チャオだったら、黒い集団が9匹。
跡を継ぐ弟ってのはどいつなんだよ。
「で、うちのFliaと何の関係があるんだ?」
その聞き方は止めてくれ。 "関係"じゃなくて"何故知っているか"を聞いてくれ。
「レース学校の・・・同級生です」
「付き合っちゃ居ないだろうの?」
じじいに聞かれる。 案外シュールじじいなんだな。
「違いますよ。 ただ、そのせいで・・・・・色々」
「・・・・そうか」
じじいの一言で、場の空気が急に神妙になった。
何か思いつめているような、そんな表情だ。
「わしが孫のことを全部任せて、家を出たせいじゃろうな・・・・息子たちも馬鹿なことを・・・・奴らが子供のときに、もっとちゃんと育ててやればよかった」
「いえ、そんな・・・・」
「若い頃は本当にダメな奴だった・・・レースも、子育ても、なーんも真面目にやらんかったし・・・・」
「あの・・・・・」
「レース中に見くびって寝ておったのが災いしたのう・・・」
「えーと・・・・」
「─チャクロンさん」
渡良瀬が、ぽん、と黒い頭に手を置いた。
そのまま、強引にも(年齢不詳の)じじいを撫でる。
チャオの習性で、思わずポヨがハートマークになったが、恥ずかしそうに球体に戻した。
「気にすることありませんよ、若気の至りって奴です。 ほら、あとのことはみんなGale君がなんとかしてくれるって」
「おい・・・・」
「そうかのぅ、わしはもう年じゃし・・・・若いのに任せてみるかのう?」
「おーい・・・・・」
「そうですよ。 そしてFliaちゃんと会えた時には、思いっきり甘やかして可愛がってあげれば良いと思いますよ」
そう言われると、じじいはにこりと笑った。
外見で実年齢が分からないじじいが笑うのを見るのは、なかなか不気味だ。
「でものう、もうあまり甘やかす金が・・・・」
「なら、Gale君に借りれば良いですよ」
このとき初めて、渡良瀬の笑顔を怖いと思った。