<15> 電球の明かり またつづき。

「レース事務所のことですけれど」

俺はすっかり忘れていたと言うのに、年下のLiltaはちゃんと覚えていた。
どうやら俺よりしっかりしているらしい。

「ここから通えるぐらい近いですから、明日、尋ねてみませんか?」
「そうだな・・・・あ、そういえば俺、一応学校中退、ってことになってんだけど、大丈夫か?」
「あれだけ走れれば十分です」

にこっ、とLiltaは笑って見せた。
なんだか、俺のほうが面倒を見られているような気がする。
それに、当然と言えばそうかもしれないが、Liltaの方が事務所に詳しいし社会にも慣れている。 年上の威厳と言うのがまるで無いぞ、俺・・・

「ちゃんと、チャオがチャオに教える体制になっています。勿論人間のコーチも居ますけれど。 初めて事務所に入るのでも、全然大丈夫。  前居たところですから、当然私のこと、皆知っています」
「そ、そうか・・・・・」
「びっくりしました、あのときは」

どのとき?と、今更指示語の指示する対象を察することに関しての鈍さを体感させられる。

「お姉ちゃんと、あんなに接近できるほど走れるなんて。 学校に居たばかりだって、聞いてましたから。 公式のレース、もう出れるんじゃないですか?」
「え?まさか。 そりゃあ、生徒でも上手い奴は出れるけど・・・」

とっさに、Trackのことが頭の中に浮かび上がる。

「俺、全然ダメ。 授業中、週チャオの新連載作品のことばっかり考えてから、ろくに話も聞いてなかったんだよな」
「いえ、でも、見た限りでは絶対いけると思いますよ! それだけ、知らない間に成長した、ってことじゃないですか?」
「ははは・・・・どうだかな・・・・ま、行ってみるしか無ぇか」


その後、Liltaが部屋に戻っていった後には、週チャオのこと、もそうだが、明日のことが頭から離れなかった。
明かりを消しても、妙なつくりのベッドにもぐりこんでも、
あ、クッション片付けてなかった、と気が付いても。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第185号
ページ番号
22 / 47
この作品について
タイトル
Final dash
作者
ぺっく・ぴーす
初回掲載
週刊チャオ第162号
最終掲載
週刊チャオ第270号
連載期間
約2年27日