<15> 電球の明かり

Final dash <15> 電球の明かり




「いいよ、お前がいいのなら。 ─悪ィな、Bell」

本当は当の本人はなんとも思っていないと分かっていながら、Liltaを後につれて瓦礫の城へと戻っていった。
情報ももらえるし、Liltaと一緒に居る、というのも楽しいかもしれない。なにより、朝考えていた練習メニューを、そのまま実行してもらえる。

そんな道中。
急にLiltaの微かな足音が止んだのに気が付いて、俺は後ろを振り返った。

「どうした?」
「あ・・・いえ、これも後で話します。 お願い事なんですけれど、詳しい話をしてからの方がいいかなって。」
「─じゃあ、その話・・・後で俺の部屋で話してもらえるか?」
「・・・はい。」



そのまま、なんともいえない気分で、日の落ちた路地を帰ってきた、午後6時。
俺はとりあえず、Liltaを連れて部屋に戻る。
一応負けたのだ、出て行かなくては。そう思って、荷物をまとめに行くため。
しかし、しっかりとした瓦礫の玄関ホールを通り過ぎた、その時だった。

「ぁ、居たぃた─Gale!!」

Mastの声だった。
彼は通路の奥から俺らのほうへ、駆け寄ってくる。

「どうしたんですか?」
「Bellから、伝言預かってンだ─ぇーと、ナんダッタッケナ・・・・そうそう、『人探しに出ることにしたから、彼方は出て行かなくてもいい。あのままだったら、彼方は勝っていたのだから』、だとさ」
「・・・・え?」
「ったく、何の話なンだ? Bellもそのまンま出てぃっちまったし」
「・・・あ・・・・いえ、何でも・・・・」

Liltaの方を振り返ると、落ち着かない表情をして、俺の手を握っていた。

「可愛いのになァ、Bell。 ありゃ、Lilta、置いていかれちまったのか?」

悪いが、もう、耳に入っていない。

どういうつもりなのだろう?人探し?誰を?チャオだろうか、それとも文字通り人間なのだろうか。
でも、とりあえずここに居残ることが出来たのだ、いいとしよう。
それに、密かな話、Bellに認められたような気がして、小躍りしたぐらいなのである。





部屋のドアを、ばたん、と閉めた。
少しランプが揺れた様な気がしたが、もう何日もここに居れば、慣れたものだ。
Liltaも、遠慮しがちに、こわごわと入ってくる。
ついさっき、BellとLiltaの部屋を見てきてみたが、Liltaの荷物だけ残され、あとはすっきりと片付いていた。
適当にクッションを二つ持ってきて、Liltaにそこに座るように言うと、彼女は何も言わず大人しくそれに従った。
暗くなってきているので、電気をつける。 と同時に、点滅しながら電球が光り、部屋が少し明るくなった。

「さて、じゃあ・・・その、詳しい話っていうの、聞かせてもらうか」

軽い口調で言ってみたせいか、少しLiltaの表情が緩んだように見えた。
真剣な話をしてもらうわけである、本来なら俺なんかが知らなくても良いようなことを。
いくら俺でも、ちょっとぐらい、気を使うのが礼儀だろう。

「それじゃ・・・・あの、私たち、名字が違うっていうのは、もう気づいていると思います」
「ああ、勿論─」
「本当は、私の方は名字ではないんです─お姉ちゃんから本当の名字で名前を言うのはやめなさい、って・・・だから、”ギメイ”ってことで、お姉ちゃんがつけたんです。 ・・・Purestain、ある国の言葉がもとなんですけれど、意味、分かります?」
「さっぱり。俺が扱えるのは、ここの言語だけだからな」
「pureが”純粋”、stainは”satan”─”悪魔”、って言う言葉が、もとになっているんです」

何でだよ、と、聞きそうになるところで、口に蓋をした。
BellがLiltaのことを嫌っているのに、関係あるのだろう。

「私と、お姉ちゃんには、もう一人、お兄ちゃんが居るんです。 ─Alfeetっていう名前の─」
「─Alfeet? で、そいつもレースやってたのか?」
「はい。すっごく、速かったんです。 それで、お姉ちゃんと一緒に、外国のレースの事務所に所属していました。私も、一緒に暮らしていたんです─人間の、3人家族と一緒に」
「人間と、か・・・」

今まで触れ合ったことのある人間と言えば、コーチぐらいか、と、苦笑を喉の奥で噛み殺す。
時々、電球が点滅したりするが、もう目はそういう事態について免疫をつけていた。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第185号
ページ番号
20 / 47
この作品について
タイトル
Final dash
作者
ぺっく・ぴーす
初回掲載
週刊チャオ第162号
最終掲載
週刊チャオ第270号
連載期間
約2年27日