<3> つづき。
「上手くできてるだろ。さ、中に入ろう」
そう、何匹ものチャオたちに促された。
といっても、扉も中の通路もチャオ一匹がやっと通れるぐらいのスペースしかなく、それでも器用に周りがパイプの柱で支えてあったり、看板をつなぎ合わせて壁を作ったりと、通りやすくしてある。
最初に出会ったチャオのすぐ後ろをついていくと、急に道が開けたので、びっくりするぐらいの開放感を感じた。
しかしそこは道ではなく、5メートル四方ほどの大きめな部屋だった。
「─ここが一応エントランスだな」
彼は短い手を短い腰に当てて、天井や壁を見回した。
もう人間の住んでいない、古びた廃墟の様だったが、それでもこぎれいに手入れしてあり、証明は裸電球だけで薄暗くとも、埃ひとつ落ちていない。
まだ中にも十数匹のチャオたちが外に出ずに残っていたらしく、世間話をしたり、ぱたぱたと壁や床にほられた穴を行き来したり、廊下を通って部屋と部屋をうろうろしたり、その様子からここ全体でかなりの広さがあることが分かった。
ちょうど、アリの巣のようなシステムで生活しているのだろう。
「ここでみんな暮らしているんですか?」
「そだな。大人も子供も。ヒーローチャオからダークチャオまで全部。でも流石にカオスチャオなんて贅沢なのは居ないな」
カオスチャオが贅沢─そういわれればそうだった。
なんせすべての小動物をキャプチャしてある訳だし、二回以上転生してからキャプチャしなきゃいけないということは、それまでずっと人間の下で生活していなければならないということだ。
すぐ後ろにいる二匹の幼いチャオのことや、捨てられたり、もともとここで生まれたりしたここのチャオたちのことを考えると、いままでキャプチャの量に不満を抱いていた自分が、逆に愚かに思えてくる。
でも彼らは俺が何を考えているかなんてちっとも気にせず、ただ笑顔で奥の部屋へと招いてくれた。