<2> つづき。
「え?Gale?」
寮の部屋で、コーチはFliaに昨日の俺のことを聞いていた。
もう俺はすっかり安心しきっていた。なんせ、昨日一日中Friaと一緒にいたのだから。
周りの数人だって、見ていたはずだ。
「昨日倉庫の方に行ったのを見ましたけどぉ~?そうですねぇ、授業終わった頃だったかなぁ?」
「成る程、有難う。じゃ、Gale、荷物をまとめなさい。学生証は返せよ」
「あ!!違いますってば、そんな─!」
俺はそのまま寮を出て行くコーチに叫んだが、全然聞いていないようだった。
もういい。そんなことより─
「おい!!なんだよ、嘘なんかついて─」
クルリと向きを変えて、俺はFiraにせめ寄った。
「俺に何か恨みでも─」
「あるわよ」
一瞬の空白があった。
俺、何かしたか?
「よ~く~も~私のネーミングセンスを馬鹿にしてくれたわね~?本当はず~~~っと根に持っていたんだから─!!」
思わずふきだしてしまった。
そんなこといちいち覚えているなんて、なんて暇な。
後々冷静に、赤くはれた頬をおさえて考え、後悔した。
馬鹿にした事、ふきだした事、両方とも。
よく考えれば、それで退学を免れたかもしれないのに。ビンタだってもらわなくても、済んだかもしれないのに。
「いいさ、俺はただ単に走るのが好きだからレースを始めた訳だし」
もう一度、門の中を振り返ってみる。
他の生徒達が、わいわいと練習場や校舎にむかって歩いていっていた。
ほとんどが、学校の敷地内にある寮に住んでいる。門を開け、くぐっていくチャオは、ほとんど居なかった。
まだ少し肌寒い朝の八時。
俺は、もうそのチャオたちの中には居なかった。