<2> つづき。

「え?Gale?」

寮の部屋で、コーチはFliaに昨日の俺のことを聞いていた。
もう俺はすっかり安心しきっていた。なんせ、昨日一日中Friaと一緒にいたのだから。
周りの数人だって、見ていたはずだ。

「昨日倉庫の方に行ったのを見ましたけどぉ~?そうですねぇ、授業終わった頃だったかなぁ?」
「成る程、有難う。じゃ、Gale、荷物をまとめなさい。学生証は返せよ」
「あ!!違いますってば、そんな─!」

俺はそのまま寮を出て行くコーチに叫んだが、全然聞いていないようだった。
もういい。そんなことより─

「おい!!なんだよ、嘘なんかついて─」

クルリと向きを変えて、俺はFiraにせめ寄った。

「俺に何か恨みでも─」
「あるわよ」

一瞬の空白があった。
俺、何かしたか?

「よ~く~も~私のネーミングセンスを馬鹿にしてくれたわね~?本当はず~~~っと根に持っていたんだから─!!」

思わずふきだしてしまった。
そんなこといちいち覚えているなんて、なんて暇な。



後々冷静に、赤くはれた頬をおさえて考え、後悔した。
馬鹿にした事、ふきだした事、両方とも。
よく考えれば、それで退学を免れたかもしれないのに。ビンタだってもらわなくても、済んだかもしれないのに。





「いいさ、俺はただ単に走るのが好きだからレースを始めた訳だし」

もう一度、門の中を振り返ってみる。
他の生徒達が、わいわいと練習場や校舎にむかって歩いていっていた。
ほとんどが、学校の敷地内にある寮に住んでいる。門を開け、くぐっていくチャオは、ほとんど居なかった。

まだ少し肌寒い朝の八時。
俺は、もうそのチャオたちの中には居なかった。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第162号
ページ番号
3 / 47
この作品について
タイトル
Final dash
作者
ぺっく・ぴーす
初回掲載
週刊チャオ第162号
最終掲載
週刊チャオ第270号
連載期間
約2年27日