その4 チャオスペ2とパクリ疑惑
シアターが暗闇に包まれました。
同時に、ざわめいていたあたりの物音も、すっと静まりかえります。
最初に、宣伝用の映像が数本、そして、いよいよ始まる、チャオ・イン・スペース2。
派手な音楽とともに、広大な銀河の映像が、スクリーンに映し出されます。
編隊を組んだ宇宙船が、その前を通り過ぎると同時に、
宇宙船の後ろから出ていた緑色の光線が交差し合い、描き出される某映画会社の名前。
しかしそれも一瞬でかき消され、曲調が弦音楽へと一変しました。
宇宙をバックに、立体文字がゆっくりとスクロールしていきます。
ふと、席に座っているロッカクの耳に、不思議なポリポリと言う音が聞こえてきました。それも、近くから。
驚いて辺りを見回してみますが、特に何も起こっていないようです。
ポリポリの音も、もう聞こえません。
気のせいかと考え直し、ふと手元のポップコーンの入れ物を見たロッカク。
狐に包まれた気分になりました。
まだ少ししか食べていなかったはずのポップコーンが、なんと半分以下に減ってしまっています。
ロッカクは、右隣に座った少年の服を引っ張ります。
「ちょっとちょっと、ひょっとしてオマエ、ロッカクのポップコーン、黙って食べたちゃおか?」
「へ?そんなわけないじゃないか。」
「じゃあどうして、ロッカクのポップコーン、こんなにちょっぴりになってるちゃおか??」
「彼女が食べたんじゃないの」
と言って少年が指すのは、ロッカクの左隣。
「おいっ、なんでそうなるの。少年じゃあるまいし」
映画を見ていたのを中断された彼女は不満げに返事を返し、と、言い終わって首をひねりました。
「両側の二人が違うとなると、そんなことができるのは誰だろう?」
「怪しいのは、前後?」
「前後ちゃおか・・・」
ロッカクは後ろを煽り見ました。
するとそこには、黒いマスクをかぶった、見るからに怪しいチャオが!
ロッカクは少年と彼女にそれを伝えます。
「絶対に怪しいちゃお!あいつが犯人ちゃお!」
「んー、黒マスクつけてたら逆に、物は食べにくいんじゃないのかなあ」
少年の冷静な意見に対し、ロッカクは黄金カードを。
「いや、実はその黒マスクの口元に、白い塩らしきものが付着していたちゃお!
きっとポップコーンのものちゃお!」
そのときふと、ロッカクは自分のポップコーンの入れ物を見て、悲鳴を上げました。
「ぬおっ、ロッカクのポップコーンがあっ、全部、ない! コンニャロー!!!」
「ちょ、なら映画が終わった後で話つけようよ」
ロッカクは彼女の言うことも聞かず、座席をよじ登り始めました。
驚く後ろの黒マスク、あわてる彼女と少年。
ロッカクは黒マスクを取り押さえると、てっぺんのボンボンをつかんでおもいきりひっぱります。
スポン!
中から現れたのは
「オマエ、カラアゲ?」
「もっと食べなきゃダメ!特に少年!おまえ細すぎ!」
「くそ~、カラアゲめ~、ポップコーン絶対返せちゃお!」
「充分食べてるのでいらないから!細いのは遺伝だからあっ!!」
「ふっふっふ、ポップコーンはすでにチャオのおなかの中で、
さっき飲んだオレンジジュースと牛乳とトロピカルパラダイス状態ちゃお!」
先ほどからにぎやかなここは、映画館近くのファミリー・レストラン。
映画を見た後、彼女にここに連れられました。
ロッカクにまくし立てるカラアゲ。
「チャオがポップコーンを盗むために、どれほど苦労したと思っているちゃおか?
映画館にはいるのもカラアゲ独自の技を使ったし、黒マスクもなかなか見つからなかったちゃおよ!?」
少年が話に乗ってきます。
「そういえばカラアゲどうやって映画館に入ったんだ?」
「そんなの簡単だったちゃお。実はチャオ、おとといカジノポリス前で、
怪しいオヤジに、タダ券もらってたちゃお!」
その台詞に、あれ、と反応する彼女。
「ん?それってこんな細い目をした人じゃなかった?」
彼女がこめかみを引っ張って、細い目を作ります。
「確かにそんな顔だったちゃおねぇ」
「じゃあそれ私がタダ券もらった人と同じ。」
「へえー」
「でもなんでタダ券配ってたんだろ、今思えば不思議だよね。」
「うーん」
ハテナになるカラアゲのポヨ。
「いずれその理由も小説化されるんじゃないちゃおか?」
「・・・・・私には、そこまで期待できない・・・」
少年がにわかに、手をぽんと打ちました。
「期待といえばロッカクの・・・」
「!!」
とたんにロッカクが激しく咳き込みます。
「その話題は不可侵ちゃおおお」
ロッカクの反応を見て、ニヤリと笑うカラアゲ。
「そういえば、チャオのアドバイスは試したちゃおか?
決め台詞『最初からクライマックスだぜ!』だったっけ?」
「ぜんぜん違うちゃお・・・」
「それってただのパクリ・・・」
少年のつぶやきに、カラアゲが反論します。
「パクリとはひどいちゃおね!そんなこといったら、この小説なんて全部パクリ・・・」
「それを言っちゃ、おしまいだろ!」
「キャラとしての寿命が縮まない
(truncated)