その5 彼女の真意と偶発の役割
「キャラとしての寿命が縮まないように、発言には気をつけたほうがいいちゃおよ、カラアゲ。」
ロッカクの言葉にかみつくカラアゲ。
「いや、チャオはあえてこの事実を問題としてとりあげたいちゃお!
ある意味これは、チャオたちがいつもパクリっぽい話題で話しているということも意味しているちゃお!」
「そんなこといったって、普通に話していたら、最近気に入ったせりふとか、会話に取り入れるよなあ」
「うーん、確かに影響されやすい節はあるかもしれないちゃおねぇ」
「ま、それはある意味ノリがいいってことでもある!きっと大丈夫!」
「・・・それで片付けて本当にいいちゃおか少年?」
「少年はいいかもしれないちゃおが、チャオたちは、パクリ疑惑というスキャンダルに
耐えられないちゃお!ガラスのハートが粉々ちゃお!」
「カラアゲ・・・オマエまたパクってるような気がするちゃお・・・」
そのとき、会話を聞いていた彼女が、ふっと笑顔を見せました。
「なんか、かわいい。」
「なにが?」
「三人が。」
言われて、互いに見合う三人。
「実は今日呼んだのは、それについて相談があったからなんだ」
彼女はそういって、カラアゲとロッカクを見やります。
「つまりその、私今、チャオをパートナーにするか、悩んでるんだよね。
周りのみんなは、チャオいいよっていって誘ってくれるけど、どうなの、実際?」
そこに、少年が水を差します。
「それにしても何でぼくら?映画まで誘って」
「それは半分ノリ。少年の反応面白いじゃない~」
言われて、複雑な表情になる少年。
「それに割と最近から、一ヶ月前ぐらいからチャオと暮らしてるんでしょ?
ほかの人は小さいころからチャオと暮らしてる人が多くて、その慣れの感覚の差というか、
私が一番聞きたいのは、つまり初心者でも何とかなるのかってとこなのよね。」
渋い顔をして、少年が腕を組みます。
「少年ーどうするちゃおー?」
「騒ぐことはない。」
カラアゲの声にも、少年は表情を変えません。
「僕らは偶然、この街で出会った。
事情が重なり、3人で暮らすことになったが、意外なほどに、苦労はなかった。
むしろ自分のほうがチャオに助けられているんじゃないかと思えるほどに。」
「少年、渋いちゃおー。どうしたちゃお?どっか、怪我したちゃお?」
心配そうなロッカク。
カラアゲはうんうんとうなずいています。
「少年の苦労が減った分、チャオたちに苦労がかかっているということちゃおね」
「ちょっと待て、僕はカラアゲに苦労をかけたことはないつもりなのだが。」
少年の反論に、ロッカクが鋭く一言を浴びせます。
「こないだ散々映画にいくだのいかないだの言って困らせたのは、誰だったちゃお~!?」
ぎくりとする少年。
そこにカラアゲも加わります。
「学校に行くとき、チャオをいつも置き去りにするのは~!?」
「いや、カラアゲ、おまえいつも日中 近所のチャオと遊んでるんだろ?」
「問答無用!オマエをこれから、世直しの連中のところへしょっぴいて行くちゃお!」
「ひ、ひえ~」
その様子を見ていた彼女が、笑います。
そして一言。
「決めた。チャオ、飼う。」
それを聞いたロッカクがあわてます。
「ほんとに?少年の言ったことを真に受けてないちゃおか?」
「大丈夫。いざとなったら、パートナーのチャオに頼るから。」
「う、うわ、少年の影響で彼女まで、悪い子になっちゃったちゃお~。」
「ごめんね~、でも少年もロッカクもカラアゲも、なんだか楽しそうじゃない。。
ちょっとぐらい困難があっても、二人で乗り越えられるような気もしてきた。」
数日後、彼女は学校にチャオと一緒に来ました。
生まれたての子供チャオです。
おまけにもうひとつ、いいことがありました。
これにより、いままであまり話し相手のいなかったロッカクに、一人の友ができたのです。
「な、ロッカク? 僕はお前たちに多少の迷惑はかけたかもしれないが、
ロッカクに友達を与える大事な役割を果たしているんだ。
これでもう、文句はつけられないだろ?」
「本当にそこまで考えていたかどうかが、疑問ちゃおね」
おわり