その2 流れの波と前日予定
やれやれといった表情のロッカク
「こないだの遠足のときはびしばし行動してたのに、こういうことになると無駄に悩むちゃおねぇ。」
ロッカクのせりふに、少年は首を振ります。
「あの時は綿密な計画に沿って行動してたからな。」
「どこが。」
少年は立ち上がって宣言します。
「とにかく、僕は、いかない!」
「なーんでーちゃおー!!」
ダブルでチャオの、猛抗議。
「オマエに気があるという物好きがどんなヤツか気になるから、必ず行くちゃお!」
「やだ!」
「デートだって一種の遠足だと思えばいいちゃお。」
「遠足は弁当のあるものだけなんだ」
「映画だけ行って食事は断るってのはどうちゃお?」
「やだやだ」
「少年ー」
「やだ、絶対断る!!」
結局少年はそのまま意見を曲げず、翌朝金曜の学校へと出発していきました。
学校へ行く直前、カラアゲがさりげなくチケットをポケットに滑り込ませていましたが、
少年の意見は結局変わっていません。
学校に着いて、下駄箱を空けた少年とロッカクの目に飛び込んできたのは、次のような文句でした。
「昨日言い忘れていたことがあったから、改めて話をしたいんだけど、どうかな?」
「これは・・・」
固まる少年。
「ど真ん中ストレートちゃおね。」
少年はしばらく考え込んでから、手をぽんと打ちます。
「相手にも気の毒だし、はっきり断ることにしよう!」
「それは!ダメちゃお!!」
「どこが?これぞ完璧な計画だと思うのだが。」
「まだ本当に相手に気があるかどうかもわからないんだから、それを確認するだけでもいいちゃお。
とにかく行きなさいちゃお!食わず嫌いはもってのほかちゃお!」
ロッカクに押し切られる形で、しぶしぶ教室に向かう少年。
教室の扉をがらりと開けると、偶然にも、目の前には話題の彼女が立っていました。
「おぉ、少年」
彼女、片手を挙げて挨拶。
「手紙読んだでしょ。ちょっとこっちに来て。」
あまりの偶然に驚き、物も言えない少年の手を引いて、ひとけのなさげな窓際に移動します。
そこへきて、落ち着いた少年がここぞとばかりに口を開きました。
「じつは、明日は行けそうにないんだ。」
「えっ、なんで?」
驚く彼女。
冷静に付いてきていたロッカクが横槍をいれます。
「少年っ、オマエ暇なくせに、デタラメいってるちゃお!!」
倒れる少年。
「ああ、何でそれを言ってしまうんだぁっ」
「暇なら行けばいいちゃおに、ねぇ。」
彼女は、苦笑しています。
「なんか、私避けられてるよ」
そのせりふに、激しく首を横に振るロッカク。
「ほんとに、ぜーんぜん、ひまちゃお!」
少年、今度は落胆のため、またしても言葉がありません。
「それなら、昨日言い忘れていたことってのは・・・」
彼女はそういって勝手に少年のポケットをあさり、映画の券を取り出します。
「実はこれ、ペア券で、チャオと人で、一組。」
「!!?」
言葉無いまま驚く少年。
「そういうわけだから、ちゃんとそのロッカクと二人で来ないと映画見れないから。」
よく見れば、映画の券には確かに「チャオと人間のペアにのみ有効」と書かれています。
「それじゃ、明日だったよね。よろしくぅ」
彼女はそれだけ伝えると去っていきました。
「・・・これって本当にデートの誘いだったのかな?」
少年の疑問にロッカクはただ、首を傾げるだけでした。
「と、こんな感じだったちゃお」
ロッカクが一通り、カラアゲに学校での出来事を説明しました。
「うーん」
聞いていたカラアゲが腕を組みます。
「それってあれじゃないかちゃお。チャオと飼い主の、ダブルデート」
「そ、それはないちゃおよ」
ロッカクがあわてます。
「第一彼女、チャオとは一緒にいないちゃお。」
チャオとの共学が一般的だといっても、まだまだ一人で通う人も多いのが実情です。
彼女もそんな一人でした。
ロッカクが話をまとめます。
「というわけで、この件に関しては、単なる勘違いの可能性が高いことが判明したちゃお。」
「なるほどー。にしてもその彼女も、少年のことを『少年』と呼ぶちゃおね。」
「ロッカクが一緒に行くようになってから、『少年』がかなり浸透したちゃお。
今はもう、本名で呼ぶ人はほとんどいないちゃおね。」
「ほぉー」
どことなく楽しそうなカラアゲ。
カラアゲは笑顔のまま少年に話しかけます。
「じゃあもう、映画に行かない理由はなくなったちゃおね。少年っ
別につきあわないんだったら、弁当がどうとか関係なしちゃお!」
「いや、まだわからん。」
渋い顔をしながら答える少年。
「ペア券だったら、彼女のほうにもチャオがいることになるぞ。
これは本当に、ダブルデート・・・」
「まっさかあ」
楽観視のカラアゲ。
「まさかこのロッカクに、それはないちゃおよー」
「まじちゃお!?」
深刻視のロッカク。
「それは困ったちゃお。どうするちゃお!? 快諾、断る、お友達・・・」
少年はにやにやしています。
「そんなわけだからむしろ、僕
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