その1 遠足勧誘と異常な反応
「なあ、どうしよう・・・」
「どうしようって言われても・・・」
暗い部屋の中、机を囲んで、神妙な表情で相談している様子の二人。
いや、一人と一匹。少年が一人と、チャオが一匹です。
机の上には一枚の紙切れが。
「ロッカクに相談されても困るちゃお。
誘われたのは、お前ちゃおよ?」
「うーん・・・」
その紙切れ、どうやら映画のチケットのようです。
中央に大きく「CHAO IN SPACE 2」の文字。
「映画は別にいいんだけどね、その後の食事が問題なんだよ食事が。」
力のこもった少年の言葉に、首をかしげるチャオ―ロッカク。
「遠足に行くなら、やっぱり弁当だと思わない?思うだろ。
お店で食べるなんて、なんだかなあ・・・」
少年の言葉にため息をつくロッカク・・・
と、そのとき、
「たっだいまぁ~」
部屋の扉が開き、暗い部屋に光が差し込みました。
とたんに、演出効果諸々を狙って、カーテンまで閉めていた部屋の実態が、丸見えに。
帰ってきたのは、もう一匹のチャオ、カラアゲです。
「おかえりー」
少年は席を立つ、と同時に映画のチケットをすばやく隠し、笑顔を作り、
帰ってきたチャオ、カラアゲに声をかけます。
しかし、その笑顔も次のカラアゲの一言で凍りつきました。
「今度は映画見に行けるちゃおか。楽しみちゃおねぇ。」
さて、このあたりで登場人物紹介をば。
まず帰ってきたチャオ、カラアゲは、ヒーローガーデン出身の子供チャオです。
ロッカクも同じヒーローガーデン出身、彼らは幼馴染です。
ひょんなことからヒーローガーデンを抜け出し、ステーションスクエアへとやってきました。
凍った表情の少年、彼については、詳しいことは明らかになっていません。
現在高一、特徴としては、遠足がものすごく大好きです。
ここはその少年の住むアパート。
もともと一人で暮らしていた少年ですが、一ヶ月ほど前からカラアゲとロッカクが棲みつきました。
少年の高校はチャオと人間の共学が認められているので、最近はロッカクと一緒に通っているそうですよ。
で、
「そんなっ、どうして映画だってわかったんだっ!!」
慌てふためく、少年。
その様子に、カラアゲのポヨがハテナになります。
「ばれたってどうゆうことちゃお?チャオは何も知らないちゃお!
さてはおまえら、チャオに黙って何か秘密の作戦を立てていたちゃおね!はっ、もしかしてそれが映画!!」
カラアゲの発見に、ますますあわてる少年。
「いや、なんでもない、映画なんて誰が言った?競馬の間違いじゃないかい?こないだのゲ・・・」
「いや、オマエは確かに映画といったちゃお!おいロッカク、真相は何ちゃお??」
「ロッカク、何も言うなあっ」
少年の叫びもむなしく、
「実は少年は今日、同じクラスの女の子に、映画に誘われたちゃお。」
あっさり教えてしまうロッカク。
カラアゲの追及の手は、止まりません。
「それはつまり、デートのお誘いちゃおね?
相手は誰ちゃお?日取りはいつちゃお?いつから付き合ってたちゃおっ!?」
少年が答えます。
「日にちはあさっての土曜日、午前十時!
付き合ってたことなんて一度もない! 彼女いない暦十六年!
相手・・・同じクラスの人だけど、明るいというか、感覚的というか・・・」
「・・・オマエ、さっきは隠そうとしたくせに」
カラアゲは大きくうなずいています。
「それならまたとないチャンスちゃお!
無難に好感度を上げる方法を伝授してほしくないちゃおか?
チャオのモテモテウンチク講座でもいいちゃおよ。
あさっての土曜日、時間は限られているちゃお!急いで準備しないと!」
怪しげな講座を無数に紹介してくれます。
しかし少年は、なにやら複雑な表情です。
「いや、それがさあ、行こうか行かまいか、迷ってるんだ。」
少年のせりふに、目を白黒させるカラアゲ。
ロッカクがせりふを引き継ぎます。
「少年いわく、お昼はお弁当でないとだめらしいちゃお・・・」
「弁当のよさがわからないような人と行ってもなあ・・・」
「・・・・・」
「・・・えっと、ほんとのところ、どういうお誘いだったちゃおか?」
カラアゲの質問に、通学組の二人が答えます。
「昼休みにふらふらしていたら・・・」
「突然後ろからどーんと、擬音とともに声をかけられて・・・」
「『そこの少年!週末映画行かない?チケット二枚手に入ったから』」
「その後の流れで、食事も一緒にすることになったちゃお・・・」
「・・・ぜんぜん断る理由がないちゃおね。」
「同感ちゃお。」
「いやだって弁当が」
「最初は映画だけの予定だったんでしょ?」
「食事を言い出したのは向こうだった!」
「それはオマエが優柔不断だからちゃお!!」
「『ひょっとして何か用事あった?』『うーんどうしよう』『あ、ちなみに昼食もつけるから』」
「どうして昼食の話が出る前に、一度悩んでるちゃおか?」
「チケット二枚というのが怪しすぎて逆の罠だと思った。」
「最初に準備してたに決まってるちゃお!」
やれ
(truncated)