その7 びむおぶほおぷと無意味な伏線
08:11 アーク研究所跡地
カラアゲとロッカクが、部屋の隅で、エッグマンにもらったお菓子を食べながら、ひそひそと会話しています。
「遠足のつもりで来たのに、なんかヤバいことになってきたちゃお…」
「うう・・、ひょっとしてこれは、勝手にガーデンを出たばちがやってきたちゃおか?」
「ひょっとしてこれは、神様が遠足にはスリルも大事だよと言ってるってことちゃおか?」
「スリルどころじゃないちゃおよぉ。」
「いやいや、ここでプラス思考というヤツを発揮するちゃお!チャオたちは宇宙まで初めて遠足に来れて幸せちゃお!」
「幸せって・・・これは間違いなく、最近流行の「拉致」ちゃおよ!?」
「ラチって何ちゃお?」
「よおするに、可愛い子が怪しいオヤジに誘拐されるという、ちょっと前に火曜サスペンスドラマにあったような典型的パターンちゃお」
「でも、チャオたちのミノシロキンは、いったい誰が払うちゃおか?」
「うーん、ソニック・・・かな?」
「あ!たぶん園長先生じゃないちゃおか?」
「えー、あの、生きた化石、とか言われる園長先生ちゃお?
そりゃいやちゃお~。生きた化石じゃ、宇宙までチャオたちを助けに来ることなんて、きっと無理ちゃお・・・」
「まあ、びむおぶほおぷは、ソニックちゃお。
気楽に待つちゃお・・・なんとおぉぉぉぉっ!?!」
「ど、どしたちゃおか!?」
「月が半分無くなっちゃってるちゃお!!」
「ああ、それはちょっと前に、エッグマンがこのコロニーからすごいビームで打ち砕いたちゃおよ。見てなかったちゃお?」
「あれじゃお月見ができないちゃお!!エッグマンめ、許せないちゃお!!くぉんぬおぉぉぉ!!!」
「どうでもいいけど、今年の十五夜は十月六日金曜日の夜で、この小説の最終話がその翌日の午前零時に掲載される予定ちゃお。」
「ということは、エッグマンがいなければ、この小説が終わるその瞬間に、満月が見られたってことちゃおね!!?」
「いや、そもそもエッグマンがいなかったら、この小説も存在してない可能性が高いちゃお!」
そんな闘志を燃やす二匹のチャオの間に、わざとらしくエッグマンが現れます。
「ほーっほっほっほ。
おやおや?君たちはどうしたのかな?」
ロッカクは言い返します。
「ロッカクは知っているちゃお!
これは、すべてエッグマンが計画した拉致監禁事件ちゃおね!
チャオたちをあの怖ーいビームでおびえさせて、ここに閉じ込めるつもりちゃおね!?」
苦笑するエッグマン。
「そんなつもりではないぞ。
お前ら二匹は、そこのシャドウが間違えて連れて帰ってしまっただけなのじゃ。
もし地上に帰してほしくば、帰してやらん手も、ないがの?」
「???」
09:45 アーク中央制御室
そこに頭をかきむしり、行ったり来たりを繰り返すエッグマンがいました。
その様子を見たルージュがつぶやきます。
「なにカリカリしてんのよ。
いやー、でもすごいわねー。地上の様子を調べてみたけど、そりゃもう大騒ぎ。
これで世界征服完了ってワケ?」
シャドウがカオスエメラルドをはめた台座を、手で示します。
「今のままでは、キャノンの充填に時間がかかりすぎる。
実用兵器としての性能を期待するなら、7つのカオスエメラルドは絶対に必要だ。」
エッグマンはますます頭をかきむしります。
「今まで何処をほっつき歩いとったんじゃい!!」
「…なんかあったの?」
「政府との交渉が失敗したのさ」
「はぁー、ヤダヤダ。中年男のヒステリーなんてサイアクー」
「キサマ自分の役目を忘れたわけではあるまいなっ!!
カオスエメラルドの情報は、どーしたんじゃい!!」
「はーい見つけてきましたァー」
と、新聞記事をひらひらさせるルージュ。
「何故ソレを早く言わん!!」
エッグマンはそれを奪い取り、読み始めます。
「何々…ミサイル落下事件の恐怖からステーションスクエアを救った
街の英雄、テイルスこと マイルス・パウアー君に警視総監賞
街からは感謝の印として巨大な宝石、カオスエメラルドがおくられた…
……オ、オッホン!」
「と、とにかく、そうと分かれば話は早い!
お前らの出番がやってきたようじゃぞ、カラアゲ!ロッカク!」
カラアゲとロッカクがとてとてとやってきました。
「貴様らにはこの機械を羽の裏につけて、地上に降りてもらう。
そこでソニックたちと合流し、さりげなく一緒に行動するのじゃ!!」
「わかったちゃおー」
「ワシら三人は地上に下りて、エメラルド反応を元に、奴等を追跡じゃ!」
「だってさ?」
「……いよいよだな、マリア」
まもなくエッグマンたちは制御室を出て行きました。
一人残ったルージュ、無線機をどこからともなく取り出すと、
「ルージュより定時連絡。
現時点ではまだこちらのシャドウが
本物の究極生命体であるかどうかは診断しかねます。
プロジェクトシャドウについての調査は現状のまま継続。
・・・成功報酬の宝石、お忘れなく。」
謎のメッセージを残し、エッグマンらを追いかけていきました。
実は、ロッカクに会話を聞かれていたことにも気づかずに……