その2 小規模なすれ違いとセンスの問題
「僕が最初に遠足に興味を持ったのは・・・・そうだあれは確かまだ小学生で確か六年だった頃だ。
行き先はミスティックルーインの丘だったなあ。
確かあの時は、六年生は一年生と一緒に、手をつないで行かなきゃならんかったもんで、
丘に着いてからその一年生とスーパーヒーロー戦隊ごっこをしたんだっけなあ。
よりによって悪役は六年生である自分に引き受けされるわけだが、それはそれなりに面白かったよ。
敵として迫り来る無数の一年生をちぎっては投げちぎっては投げ・・・・・・
やっぱり遠足は仲良くみんなでいってそして楽しく遊ぶことが必須だな、なあカラアゲ。
ん?、カラアゲ?」
ステーションスクエアからミスティックルーインへと走る列車内において
よくわからない遠足理論を振りかざす少年と、そのお供、白チャオカラアゲは
遠足用リュックサックを背負い座席に座り、なにやら どよんどよんしたムードを放ちつつ
ワイルドキャニオンへと向かっているのでした。
なぜにカラアゲとこの少年があまり仲良くできないかというと、
まあ単に馬が合わないとかそんな感じの他愛無い理由なのですが、
その二人が偶然にも出会い、一緒に遠足にいくことになったからさあ大変。
呉越同舟死なばもろとも。ああ、なんて不幸な神のめぐり合わせ。
そんなことを考えていたカラアゲは
「それは一種の運命のいたずらなのかちゃお」
突然呼びかけられたことに驚き、妙なことを口走ってしまいました。
「運命のいたずら?なんだいそれは?」
「な、なんでもないちゃおよ!?」
とっさにごまかすカラアゲ。
「うーむ、しかし僕ら二人、いや一人と一匹か、が出会えたのも、何かの運命かもしれないな。
こうして遠足をしているのも、何かの運命かもしれないな。
遠足というものには、何か運命的な 力が秘められているのを感じるよ。
うん、こうして遠足を共にする二人、じゃない一人と一匹は
We are on the same ensokuからとってWAOTSE(ワオトス)と呼ぶことにしよう。そうしよう。」
「ひとついっていいちゃおか?」
「ん?」
「そのネーミングセンスには、何か問題がある気がするちゃお。」
「そうかな?じゃあ、カラアゲなら、どんな名前をつけるんだい?」
「ん~、遠足大作戦、とかちゃおねえ」
「それのどこがいいんだい?僕にはWAOTSEのような優雅な響きがその名前からは感じられないと思うのだが。」
「WAOTSEのどこが優雅なのか、全くもって理解できないちゃお。
それに遠足大作戦から放たれる漢字の気迫のそれは、そのくだらないのを上回るちゃお。」
「WAOTSEのどこが優雅なのかというとね、まず最初のワオが、遠足の途中で出会う様々な発見を意味しているんだ。
つまり感動の「わお」だね。おお、何で素直で清らかな言葉なんだ!」
「あと、WAOTSEなんてよくわからない英語の名前よりかは、
遠足大作戦のほうがより、小学生もいるCHAOBの面々に優しいと思うちゃお。」
「それでトスが・・・・ふむ、そうでもないと思うけどね。いっそ、遠足大作戦も、英語にしてしまえ。
とすると・・・The Project of The ENSOKUか。・・・・・TPOTE?」
「そ、そんな無理に英語にしなくてもいいと思うちゃお・・・」
「英語というのは何かと便利なんだ。まず、万国共通だろ?
それに文字が日本語に比べて簡単だから、フォントデザインがしやすいんだ。
英語化には、こんなにも深い意味があるんだよ。それにしてもTPOTE、なかなかいい響きだ。」
「残念ながらこの小説は、日本語版チャオBBSでしか発表されないちゃお。
それに、フォントデザインのしやすさが、何かこの小説に関係するちゃおか?」
「フォントデザインのしやすさは、絵本化のときに関係するんだ。」
「そういうのを、たぬきの皮算用って言うちゃおね。
この小説が絵本化されるとは、考えられにくいちゃお!!」
「すでに僕の頭脳には、タイトルロゴのイメージが膨らんでいる。
かわいらしいポップ体で大きくThe Project of The ENSOKUと書いてあって、
そのバックに、知的な僕の顔がプリントされてるんだ。」
「悪趣味ちゃおね。」
「・・・そう言うなら、君のタイトルロゴ原案も、聞かせてもらおうじゃないか。」
「まず、極太明朝体で大きく「遠足大作戦」と、かかれているちゃお。
そしてそのバックには、今にも発車しようとする電車のイラストとかわいらしい白チャオの顔で、
ワクワク感をかもしだすちゃお。」
「悪趣味だね。」
「オマエのセンスで言えば、いいものでも悪趣味になるだろうちゃお。」
「その言葉、そっくりそのままお返しするよ。」
「・・・・・」
「・・・・・」
こうして醜い悪趣味のなすりつけあいを行っているうちに、電車はミスティックルーインへと、やってきました。
果たして、こんな調子で遠足がうまく行くのでしょうか。