第8話 対峙
翌日、昨日と同じ様にグレンに起こされた俺は朝食を摂り、村のはずれに向かった。
グレン「刀の扱い方か・・・、剣道と言うのをやっていたんだろう?
なら、自分の思うようにやってみろ。ただ、真剣は重い、それだけは注意しろ。」
久遠「わかった・・・。」
俺は頷いた。
そして発現するために目を閉じた。
幼馴染を探す為に、必要になるかもしれない。
自分を守る為でもある。でも幼馴染達も守りたいから力を望む・・・!
俺はそんな事を考えながら、刀を発現させた。
やっぱり重い。
とりあえず鞘にある紐を使って、腰に固定する。
グレンがまず実演してくれた。
グレン「いいか?よく見てろ。」
そう言うとグレンは腰に提げた刀の鞘に左手を添えて、親指で濃い口を切ってから、右手で柄を持ち引き抜いた。
グレン「いいか、まず左手で刀を押し出すんだ。これは刃を鞘口に触れさせない為だ。」
そしてグレンは、両手で構えて縦に下ろし、流れる様、次に、横に裂く様に振る。
一連の動作が綺麗だった。
そして、そのグレンの動作をしてみる事にした。
だけど、刀を上手く扱えなかった。
刀を扱うんじゃなくて、刀に扱われていた。
つまり重さに刀を上手く振れなかった。
グレン曰く、練習あるのみだ、と言っていた。
抜き身のままなのは刃の危険性を体に覚えさせるためとも言っていた。
俺はひたすら慣れる為に振り続けた。
昼食を摂った後、昨日と同じ様にストレッチの後にもう一度、発現させようと目を瞑った。
?「やっぱり久遠か。」
俺は声のした方を向いた。
そこには、黎人がいた。
久遠「黎人!無事だったんだな!」
俺は駆け寄ろうとした。
黎人「来るな!」
久遠「なっ・・・。」
黎人「久遠、お前はもう発現させる事ができるんだろう?
発現しろ。そして俺と戦え・・・!」
久遠「出来るけど!いやだ!黎人・・・、お前と戦う理由が無い!」
黎人「理由ならある。」
久遠「何だよ?!」
黎人「自分に聞け!武器を発現させる気が無いなら、俺がその気にさせてやる!」
そう言った黎人の手に刀が握られていた。
久遠「何でだよ?!」
そんな俺の言葉は耳に入らないとでも言うように黎人は俺に斬りかかって来た。
俺は反射的に避けたが再度斬りかかって来た。
俺は、身を守るために刀を発現させた。
黎人「その気になったか?」
久遠「違う!お前を斬る事は俺にはできない!」
黎人「っ・・・!、同情か?ならいい、久遠、お前をその気にさせてやる!」
−グレン−
目の前の光景に俺は傍観していた。
黎人がクオンに何かを言って刀を取り出したのを見た。
そしてクオンも刀を取り出した。
そして黎人が斬りかかる、クオンが刀の腹で受け流す。
流石だ、剣道と言う剣術をやっているのがわかる。
だが、黎人の刀の構え、振りとは明らかに違う。
守りに入っているとはいえクオンはまだ刀に振り回されている。
それに対し黎人は刀を自由に操っている。
大分、刀を振っているのだろう。
そしてまた一振り、またクオンが腹で受ける。
それが何度続いたのだろうか・・・。
黎人「久遠・・・、お前のせいだ、お前が・・・!」
そう黎人が言った後の動きは、今までの動きとは違った。
一瞬で間合いを詰めて、峰でクオンの腹を打った・・・。
−如月久遠−
目の前に居た黎人が一瞬で懐に入って来た。
そして刀を返して峰で俺の腹を打ってきた。
黎人「殺すにも及ばないよ、今のお前は・・・。
いい加減にしないと俺はお前を殺すよ?
次に会うまでは俺と会った時に何をするのか、俺がお前の前に立つ理由を考えておくんだな。」
そんな言葉を俺に向けられたのは聞こえたでも、俺は峰に打ち込まれた事によって意識が遠のくのを感じていた。
「お前が俺と試合した時に、お前は−−」
黎人の言葉はよく聞こえなかった・・・。
黎人「何故、手を出さなかったんだあんたは。」
グレン「自分に聞いてみればいい。黎人」
黎人「・・・、俺には好都合だがな。次に会うまでは死なないように鍛えてやるんだな久遠を・・・。」
−葉月黎人ー
「俺はお前の−−」
立ち去る時、よくは聞こえなかったが何か言われた気がした・・・。
俺は馬に乗り、要塞に帰る事にした。