[[ .10 ]]

署長が輸送車の中にいる、チャオに話しかける。
輸送車は街のど真ん中に置かれ、その上や周りに間無く警官が配置。
もはや、この間に盗難などの犯罪が発生しようがお構いナシのように。
人数はスゴイ、警察署内の人間を全て外に出す形。そりゃあ、何人かは残るが。
ボランティアの人もいるらしく、素性を全て洗い出されるならば参加可能だそうだ。
結構確実な誘い方だ、とも思った。
捜索した付近の場所には点々と警官を配置。
キケンであった場合には、常備している無線で一言入れる。それで、そこに駆けつけることになる。
署長は、指示を出さず輸送車の中にいた。
「小動物の[ こうもりを与えて足をなくしたチャオはどうやって歩いているの? ]前から疑問だったんだ」
素朴な疑問。署長は、チャオと話すのはこれが初体験だ。異常な事態のなかで、ここだけ緩やかな雰囲気だった。
「どうなってるんだろうね。きっと、歩いているように見せかけてただ浮いているだけチャオ」
続いて、こんな疑問をぶつける。
「羽が何枚もあるチャオっているのかい?」
チャオたちは笑う。笑いながら言う。
「[ 大発見、トンボチャオ!? ]」
それもまた笑いを誘う。そうして、どんどん雰囲気がよくなっていく。
そこで、別の疑問。
「[ カオスチャオって、羽がないのにどうやってとんでいるの? ]」
その疑問を聞いた途端、チャオたちの一部が笑い始める。
「おいおい、どうしたんだ?」
署長は何か恥ずかしいことを聞いたのかと、ちょっと赤くなりながら聞く。
「[ 溺れるダークカオス ]がいたチャオ!良い人生送ってるはずなのにあれは無いって!」
「しかも、自慢の走りで[ 一位になってもらったスコップが盗まれた ]ってギャグだよなぁ」
思い出し笑いだと理解して、署長はほっとする。
しかし、カオス絡みで疑問が浮かぶ。
「[ 死なないチャオは悲しいよな。みんな死んでも一人だけなんだから ]」
今回の事件の目的を、署長は把握していない。
最低でも一つは男と関わっていないと分からないだろう。実際、署長は関わっていない。
指示も出さず、一心にチャオの安心を案じていただけ。
その署長が、初めてこの事件に関する指示を出した。あくまでも、自分の考えで守ろうとするために。
「人間と関わったばかりにね。署長さんは本当に愉快な人だ」
人間と関わる。確かに、チャオに対して人間がとある触れ方をするとカオス化する。
カオスとは「混沌」という意味を持つのだが、なぜそういわれるのかが署長には今まで理解できずにいた。
混沌とはチャオの持つ人生そのもの。それも、今を風刺した言い方だ。
それを察し、冗談交じりに署長が大きな声でチャオに言い聞かせる。
「[ お前にキャプチャーさせる小動物はねぇ! ]
俺はいつであってもそうだ!自由に生きろ!」
余計なパーツなんていらない。個人で違う色なんていらない。
必要なのはチャオである原型。その中で、この言葉は目立った。
しばらくの静寂の後、ずっと泣いていたチャオが声を挙げる。
「今日、僕の誕生日なんだ」
誕生日なのにも関わらず、こんな騒動にしてしまったことを申し訳なく思った。
土下座。無意識に出た土下座。
「すまなかった、本当に」
言いかけたところで、頭から水を被る。
「なんだ?上!注意しろ!」
だが、透明な水。粘り気も無い。匂いも無い。
口に入れても、何の味もしない。そんな不思議なことをやっている署長に、一匹のチャオがコップを渡す。
土下座をしているときに、既に全員にコップと水が渡っていた。
もしもの時のために置いてあったクーラーボックスを勝手に開け、勝手に用意している。
そのチャオが軽く殴られた後、笑いながら水を注ぐ。
「[ チャオの誕生日を祝って~、かんぱ~い!! ] ほら、署長!」
その様子が丸聞こえである、輸送車周辺には苦笑や、拍手が立ち込める。
「そんなことをやっていて襲われたらどうするんだ!しっかりしろ!」
そんな署長も、笑いながら言っている。同時に、絶対にこの可愛いチャオたちを守ると改めて誓うのであった。
とある朝、とある街。とある車にて。

そして、ここは病室。太陽の光が差し込む、柔らかい雰囲気な病室。
警官の格好をして、注射器を持つ"吸血鬼"とその被害者である男が壁に並んで座っていた。
すぐにでも通報をすることを考えるが、そうもいかない。"吸血鬼"と話す時間ができた。
「なぁ、お前」
「俺をどう思う?」
吸血鬼の一言に気圧され、言い出した言葉を引っ込める。
「いや、そっちの話で良い。正直、お前のことは良く分からないと思っている」
本音をぶつけた。男の考えでは、ただの騒動を起こしたいどこかがおかしい奴だ、とそれだけの認識に落ち着いていた。
「それが本当だ。だけれど、俺はやりたいことを成し遂げた。チャオを救えた」
虚ろな目でその言葉を口にされても、どうしても精神病患者にしか見えない。どこか病んでいるから騒動を起こしたとしか。相当の重症だ。
「正直に言う。事件を起こせて本望か?」
このままだとYesだろう
「いいや」
ちょっと待てよ。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第223号+ソニック生誕記念号
ページ番号
10 / 12
この作品について
タイトル
「泥酔した吸血鬼」
作者
Sachet.A
初回掲載
週刊チャオ第223号+ソニック生誕記念号