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後の"吸血鬼"であるその男は、行動を起こすことができた。結果、「吸血事件」である。
この事件にて生まれるものが、「愛情」であると読んだ。
しかし、現実は非道な物。チャオが減っている事実には気付かない。チャオに対しては鈍感なのだ。
世間はチャオをその街のシンボルとしか見ていない。それなりにカワイイとは思っているが。
果たして、現代において"可愛い希少種動物"を保護する一般人はいるだろうか?
可愛いとは思うが、それはひと時の感情。飽きてしまう。他人事だから。
それに、チャオも飽きていた。チャオを連れてガーデンに向かったが、こっちを見るなり一瞬"グルグル"を見せる。
"人の目に晒されてはいけない。"
それが男の考え出した結論である。あの世へと導くために。それなりに愛されているために、嫌でも転生を繰り返し何度も何度も地獄を見せられるから。
チャオたちの理想郷は、あの世。何もかもが桃源郷。夢の世界。
"吸血鬼"はチャオを助ける目的で行うはずだった、この殺人。だが、その血液に体を浸すととんでもなく気持ちよくなる。
その発見をしてしまったから、別の意味で男も得をした。
「[ コンニャクとチャオどっちが水分多いの? ]
俺はチャオだと思う。心の中に雨が降っているから」

警察の動きは乏しかった。
男によって信頼を落とされ、犯罪の増加を引き出されてしまった。
男の狙いが分からない。そして、暴挙に出る。
「警察署内にチャオガーデンを作る。直ちにチャオを連れてくるんだ」
誰もが耳を疑った署長の発言。だが、"チャオ保護"のためになら十分に成功する。
しかし、男の狙いは違う。あくまでも人間から遠ざけることだ。
署内で手厚く保護してしまうと、チャオたちはどうなるのだろうか。もういっぱいいっぱい。
生産性がまったく感じられない、この社会に気付いたのはチャオが最初であったことは言うまでも無い。
こうして、警察は放送機関を利用して大々的にガーデンのお引越しをしたのであった。

「[ そういや最近あいつダークガーデンの檻の中に閉じ込められた後みかけないな。どうしたんだ? ]」
「すぐに解放されたが、[ あいつはヒーローガーデンの噴水のところで突き上げられてとうとう天国まで飛んだそうだ ]」
輸送中、こんな会話を耳にする。
ダークガーデンとヒーローガーデンは遠くの島にある。なぜそれが分かるのだろう。
テレパシーなどではないことは確かだ。
園長先生の不正金の源である、"闇の取引所"がその答えになっている、と輸送車の人間はそう考える。
チャオにも人間と同じように、遺伝子があるのなら。その遺伝子に、記憶が記録されているのだったら。
この会話は、遠くの島の昔の出来事になる。そして、話が分かるというのはその近くにいたと考えるべきだ。
人間によって無駄な記憶を体に刻み込まれ、無数の傷跡で泣いているチャオ。
それに気付かず、傷跡を付け続ける人間。
動物はそれぞれ、自分たちの領域で過ごしてれば良い。
この世界は破壊するもので作られてきた。だが、その世界は作られるもので破壊されている。
皮肉なものだ。境界線が作られたのも、作られた生命によってのものだ。
"グルグル"を目にする輸送員たちは、そのまま署内まで輸送する。
そして、完全に人の目に晒されることになったチャオ。
そのチャオの翼は、大空へ羽ばたきたいと思っているに違いないだろう。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第223号+ソニック生誕記念号
ページ番号
8 / 12
この作品について
タイトル
「泥酔した吸血鬼」
作者
Sachet.A
初回掲載
週刊チャオ第223号+ソニック生誕記念号