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そう。泥酔しきった男は正解を生み出していた。
"チャオ"だ。なぜこんなところを歩いているのだろう?方向からしてホテルの方向だ。
駅の階段で座りながら座談会を行っていた男たちの中で、唯一まともであった一人。
そいつが接触を試みる。
「お前今一人か?」
振り返り、精一杯怒っている表情を作っている。なんとも可愛い。
「[ チャオを数える時は匹で数えろ ]!!」

正直言って、どっちでも良いような気がする。
そもそも、単位なんてどうでもいいような気がする。小さいところに精一杯本気で怒るチャオも可愛い。
「ちょっと来てみろ」
チャオを呼び止めたついでに、来てもらう。
怒ったのにも関わらず、今度は笑顔でトコトコ歩いてくる。スイッチの切り替えが激しい。
「これ、何が入ってるか分かるか?」
男はそういって、注射器をチャオに差し出した。
分かるはずも無いが、とにかく話題が欲しかった。話を続ける意味でも、注射器は大事な役割を果たした。
だが、差し出した瞬間。チャオがそれを注射器であると認識し、瞬時に身を引く。
「[ お前のやっている事はエブリタイムエブリシング全部お見通しだぁ! ]
チャオに刺そうとしてたチャオね!?」
見るからに違うのに、小さいことにこだわるチャオだ。
手のひらに乗せて差し出したのに、この仕打ちは酷い。仕方が無いので、階段の下に落ちないように転がす。
注射器の形からして、弧を描くように転がる。このことから言ってどうやって転がしたかはわかるだろう。
「それで良いチャオ」
そういってしばらく注射器を眺めて、注射器を投げ返す。
「こんな危ないもの渡すな!何が入ってるかなんて知らないチャオ!」
やれやれ、退屈しないな。とその様子を見て小さく笑う。
しかし、注射器はどこにあるんだ?周りを街灯頼りに手探りで探す。

「手首に刺さってやがるぅぅぅぅ!!ちくしょおおおお」
既に数cm、ピストンが押し込まれている。つまり、液体が体の中に手首から入り込んでいた。

慌てて引き抜くものの、入ってしまったものはどうしようもない。
刺さっていた場所に口を当て、血を吸い込む。
液体は全て出ないに決まっているが、もしかすると危ないものなのかもしれない。
安全策だ。吸った分だけ吐き出し、それを数回繰り返した。
チャオがその様子を覗き込む。
「そんなに血が出るチャオ?チャオが見てあげるチャオ。
なんだ[ ・・・真っ白じゃないか。 ] 心配することは無いチャオ」
そりゃそうだ。血が無くなり、肌からは赤みが消えた。しばらくすりゃあ治るが。
「おめーのせいだろうがよぉ」
一体どうなるか心配しながら、必死に吸い上げながら答える。
もう血は出てこない。もしかすると、奥に入りこんでしまったか。
しかし、麻薬をやるような奴じゃないはずだ。となれば、また違う液体。
男は何を思ったか、急に手首に針を刺し、ピストンを押した。液体がどんどん入ってくる感触。
蝕まれる体。既に兆候が襲っている。

「液体はアルコールだっ!!」
男はそういいながら、気を失っていく。
血管に直接注入すると、通常のように摂取するよりも数倍効果がある。
肝臓を経由しないので、効果はひとたまりも無い。全てを注ぎいれた状態なので、酔うばかりか死のキケンもある。
しかし、男は何も心配をせず気を失った。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第223号+ソニック生誕記念号
ページ番号
2 / 12
この作品について
タイトル
「泥酔した吸血鬼」
作者
Sachet.A
初回掲載
週刊チャオ第223号+ソニック生誕記念号