~16話その5・海の近くの町~

~ロンロンとウーロン~
 ウーロンの視点
カモメさんと風さんが話しかけてきた。
“いっしょに遊ぼう。鬼ごっこしたりとか。”
僕はどうして良いか解らなかったので、ロンロンを見た。
ロンロンはうなずいた。
僕はいっしょに遊んでおいで、という意味だと思った。
“うん!遊ぶ!”
“そいつらより、僕らと泳ごう!気持ちいいよ”
“そいつらって言うな!空の方が気持ちいいし。さぁ、僕ら遠いかけっこをしよう”
僕は困ってしまった。
魚さんとも遊びたい。でも、カモメさん達は、魚さんが嫌いみたいだ。
僕が困っていると、ロンロンが言った。
“それなら、両方と遊べばいい”
するとカモメさん達は言った。
“泳げないから海の中じゃあ遊べない”
それに魚さん達も言った。
“僕らは空を飛べないから空では遊べない”
僕は、本当に困ってしまった。
するとロンロンが言った。
“できるさ、これを使えば。”
ロンロンはそういって何か不思議な機械を発動させた。
次元にひずみができた。
目で見える効果は、今まで無かった物、巨大な穴ができたこと。
“この中は、特殊な空間につながっている。小さめの生物と、妖精や精霊が好きなように行動できる世界だ。この中なら、魚が空を飛ぶこともカモメが泳ぐこともできる。”
僕らは喜んでそれに飛び込んだ。
いっしょに遊びたかったから。
その中にはいると、みんなの姿が微妙に変わった。
魚さんには、羽と角が生えた。
カモメさんは翼が四枚になった。
僕らは喜んで遊んだ。
鬼ごっこしたり、空を飛んだり、水の中に潜ったり・・・。
とっても楽しかった。
しばらくすると、ロンロンがいった。
“もう、帰る時間だ。”
すると、もといたところに戻っていた。
魚さんには、羽や角はなかったし、カモメさんの翼は二枚だった。
“ばいばい”
僕らはそういうと、彼の方へ走っていった。


 ロンロンの視点
彼は、あの町には良い金属や工具があると知り買いに行った。
僕にはよくわからなかったけど。
僕は、ウーロンのお守りをすることになった。
もっともウーロンはそんなことどうでもいいようだけど。
ウーロンに風とカモメが話しかけていた。
ウーロンはどうして良いか解らない、という顔をした。
うなずいてやった。
特に意味はなかったけど、ウーロンは遊んでおいで、という意味だと思ったらしい。
ウーロンが了承して、遊ぼうとすると、魚が話に割り込んできた。
ウーロンが困っていたので僕は言った。
“それなら、両方と遊べばいい”
たぶん無理だけど。
空と海が交わることはないのだ。
予想通りだった。
でも、秘策がある。
これを使えば―
“できるさ。これを使えば。”
僕はそういって、『バーチャル・フィールド』・ブルーとライズが作った異次元に穴をあける機械を発動させた。
ロンロンの目の前に大きな穴ができた。
“この中は、特殊な空間につながっている。小さめの生物と、妖精や精霊が好きなように行動できる世界だ。この中なら、魚が空を飛ぶことも、カモメが泳ぐこともできる”
それを信じることができるなら。
ウーロン達が飛び込むのを確認すると、僕もそれに飛び込んだ。
書き置きを残して。

魚は、Fly・fishになっていた。
カモメはウインド・ランナーになっていた。
 ※Fly・fishとウインド・ランナーは想像上の生き物ってことにしといてください
まさかこうなるとは思わなかったけど。
ウーロンは彼らと遊んでいた。
僕は、しばらく休んでいることにした。


もうそろそろ時間か。
ウーロン達は遊び疲れたみたいだし。
“もう、帰る時間だ。”
僕がそういうと、それを合図に『バーチャル・フィールド』は、別の発動をした。
元の場所へ戻った。
彼が、大荷物を持って歩いてくる。
僕は、書き置きを燃やすと、彼の元へ走っていった。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第120号
ページ番号
45 / 55
この作品について
タイトル
小さな話
作者
バロン
初回掲載
週刊チャオ第107号
最終掲載
週刊チャオ第124号
連載期間
約4ヵ月