~16話その4・森の中の町~

~タンタンとマッチャ~
タンタンの視点
あれからしばらく歩いた。
周りのどちらを見ても、森。
なんだかうれしくなった。
森や鳥は、僕を優しく迎えてくれた。
風がこっちに来てと僕を誘う。僕は素直についていった。
しばらくすると大きな湖があった。
僕は飛び込み、そして潜った。
湖底には町があった。
この、森に囲まれた湖は町を静かに包んでいた。
魚たちは、僕を町へと誘った。
僕はいったん、顔を出し、マッチャと彼を誘った。
マッチャは喜んで飛び込んだ。
彼は遠慮した。僕は、彼に遠慮しなくて良いと言いながらさっと後ろに回って湖に突き落とした。
彼はおぼれかかった。
僕はすぐに魚たちをよんだ。
魚たちは彼を助けた。
金色の魚が来て、彼に鱗を飲ませた。しばらく溺れなくなるんだそうな。
風が僕にささやいた。
“落とし物をとってきて欲しいの。魚たちが場所を教えてくれる。”
僕は頼みを聞くことにした。
マッチャと彼に簡単に説明すると、マッチャは張り切った。
手伝ってくれるって。
僕らは潜った。
しばらくすると、小さな卵が沈んでいるのを見つけた。
魚たちがこれだと言った。
僕は、それを湖面まで持っていった。
すると、それは卵から出てきた。
小さな、風の妖精が出てきた。
妖精は、僕らにお辞儀をすると、風につかまった。風は言った。
“彼を助けてくれて、ありがとう。彼はまだしゃべることができないから代わりに言うよ、助けてくれてありがとう。”
風は去っていった。
僕はつぶやいた。
「どういたしまして。」

マッチャの視点
今日は、お散歩。タンタンといっしょにお散歩をするのは久しぶり。
なんだかうれしい。
タンタンも、森や、鳥に囲まれて楽しそうだ。
ふと、一筋の風が吹いた。
タンタンは風に誘われるようにその風をおっていった。
しばらくついていくと、大きな湖があった。
タンタンは飛び込んだ。そして潜っていった。
しばらくして、僕がちょっと心配し始めた頃、タンタンは顔を出した。
“マッチャ達もきなよ。町があったんだ。”
僕は喜んで飛び込んだ。
彼が遠慮したのに、タンタンは彼を突き落とした。
彼がおぼれかかると、魚たちがやってきて、彼を助けた。
金色の魚が、彼に自分の鱗を飲ませた。
タンタンの周りを風が駆け抜けた。
するとタンタンは言った。
“風の落とし物を取りに行こう”
僕は、喜んで、タンタンに言った。
“うん!”
もちろん、彼は行かなかったけど。
僕らは潜った。
タンタンの言ったとおり、湖底には町があった。
なんだか神秘的なところだな、と僕はつぶやいた。
しばらく、泳いでいると、小さな卵がひっそりと沈んでいた。
魚がまるでタンタンにささやくようにその周りを回った。
タンタンはそれを抱えると、湖面まで上がっていった。
もちろん、僕は、遅れないようについていった。
卵が割れて、不思議な生き物が出てきた。
それは、僕らにお辞儀をすると、しばらく中を漂い、そして、風の乗って去っていった。
“ありがとう”
そういう声が聞こえた気がした。
「どういたしまして。」
タンタンは、そうつぶやいた。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第120号
ページ番号
44 / 55
この作品について
タイトル
小さな話
作者
バロン
初回掲載
週刊チャオ第107号
最終掲載
週刊チャオ第124号
連載期間
約4ヵ月