~16話その6・チャオのいない町~

~マロチャとメロン~

マロチャの視点

僕はこんなにたくさんの生き物を見たのは初めてだった。
あと、こんなにたくさん生き物がいて、建物があるのにチャオがいないのも。
こういう体験をしたのは、おじさん(ライズのこと。マロチャはレモンの子供)とブルーのおかげだ。
本当に。
僕らが道を歩いていると、小さな生き物が僕に近づいてきた。
そして言った。
“これかわいい!”
そういって、僕をなでた。
僕は思わずポヨをハートにしてしまった。
“これ喜んでるよ!”
そういって、僕をいきなり抱き上げた。
僕はビックリして逃げようとした。
“ほら、こんなになついたよ!”
そいつ訳のわからないことをいった。
“これちょうだい!”
“断る”
彼はそういって、そいつから僕を取り返してくれた。
“お金なら払うわよ?”
“そういう問題ではない。チャオを物扱いするようなやつには渡すわけにはいかない”
何か、ちょっと照れた。
彼は、僕とメロンをつかむと、走って逃げた。
そいつの後ろからたくさんの生き物が来て口々に何かを言いながら追いかけてきたからだ。
しつこかったし訳がわからなかった。
なんだか、ちょっと疲れた。

メロンの視点

変な町だった。
チャオがいなかったから。
別の町―ここに来るときに通った町にはいたのに。
そんなことを思いながら歩いていくと、小さな(チャオからすれば十分大きいけど)生き物がいた。
後ろにいろんな生き物を従えていた。
生き物たちは、とても悲しそうな目をしていた。
きっと何かつらいのだろう。
僕は何となくそう思った。
小さな生き物は、マロチャをなでたり、抱き上げたりした。
そして、マロチャを渡せといってきた。
冗談じゃない。
そんなことをしたらレモンさんにどうされることか・・・。
きっと、ぼろぼろに・・・・う~考えたくもない・・・。
僕の心配とは裏腹に、彼はにべもなく断って、マロチャを取り返した。
彼は一言
“断る”
といった。
めちゃくちゃかっこよく見えた。
いろいろあって、なんだか疲れた。
訳のわからないことを言う生き物から必死に逃げたり、
脅されたっぽいおびえつつ半分やけの入ったと思われる動物たちから逃げたり・・・。
なんだか疲れた。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第120号
ページ番号
46 / 55
この作品について
タイトル
小さな話
作者
バロン
初回掲載
週刊チャオ第107号
最終掲載
週刊チャオ第124号
連載期間
約4ヵ月