ものごと ページ3
あらすじ:政府と名乗る謎の人に、連れ去られてしまった秋、登、少女の三人。一体どうなってしまうのか。
コツ、コツ、コツ・・・
そんな音とともに、黒い姿の男が姿を現す。ふと、ぼくらを襲った人を思い浮かべる・・・。同一人物だ。どこか、さみしげな感じを漂わせるこの空間に、邪手が伸びた、というとでもいうのだろうか。この空間の空気がよりいっそう重くなる。その男が、ぼくが起きているのを確認すると、ドビラの鍵をあけ始めた。
「さっきは悪かったね。ぼくらも手荒な真似をしたくないんだけれど、ついてきてといってついてきた人は今までにひとりもいないから、こうするしかなかったんだよ。今では知らない人についていくなっ っていう教育がされてるから、こちらとしてはたいへんなんだよ。」
この空間の空気は、この男の人の、想像とは全く違った、顔と不釣合いな明るい声によって、いっきに重みがなくなったようだ。そして、おなかの辺りがひりひり傷むことを思い出す。が、そんな事は気にも留めない。まるで、人物像がすべて、崩れていくようだ。どうも、同一人物とは思いがたい。でも、実際に同一人物なのである。
黒ずくめの男が、鍵を開け終わると、すまなかった と、一言言って、ついてこいと合図する。ぼくはそれに従った。
夏らしからぬ、冷たい空気の部屋から外へ出ると、そこは思ったよりも暖かい空間だった。中から鉄格子沿いにみていたものとは全く違う、暖かいレンガ造りの内装で、ところどころコケが生えているものの、空気はからっとしていて、空気全体がゆったりとしていた。先ほど黒ずくめの男が降りてきた階段を、今度は二人でのぼっていく。
階段を上り終えた先には、あきらかにレンガ造りだった部屋と不釣合いな、全体が機械に包まれた、どこか近未来を思わせる、広い部屋だった。そんな部屋の奥の自動ドアをくぐると、そこにもまた、機械に囲まれた部屋があった。