ものごと
▼本編▼
キキキキキーーーーっっ!!
景気のいい、かん高いおととともに、公園の入り口に、一台の黒い車。
その車に、誰もが目をうばわれ、とっさにふりむく。黒い車の扉が開く。
中からは、黒いスーツをみごとなまでにきこなした、黒いサングラスをかけた男の人が、二人現われた。その二人は、像を思わせるしっかりとしたあしどりで、こちらに向かってくる。ぼくの心臓の鼓動は、次第に早くなっていく。
「ねぇ、あの人たち、何者かな。こっちにむかってきてるよ。」
秋がそういい終わる頃には、二人の男は、すでに目の前。
あなたたちは?
そうたずねようとするが、その思いを、断ち切るように男の人が話し始める。
「われわれは、政府のものだ。」
いきなりの言葉に、とまどう秋とぼく。胸の鼓動は、うるさくなり続ける。
そんなぼくをよそに、ぼくの好奇心はみごとなほどに、質問をくりだす。
「あなた方は、なぜこんなところへ?」
翔も輝も、ぼくのうしろで身をひそめて、ぶるぶるとふるえている。小さな体から、とても震えている事が、簡単にわかる。それだけとても怖がっているのだろう、そう思う。
秋は身を潜めているチャオを、なでて、はげましながらも、耳元でつぶやいた。
「あの人たち、あやしくない?この子達も、こんなにこわがってる。政府の人なんて、いう保障なんてどこにもないわけだし。」
そういう頃には、ぼくは意識がなかった。たぶん、言い終わった後に、秋も、意識を失っていただろう。
ぽっかりとした夕日は、もう、沈んでいた。
突然目に入った光景に、はっと息を呑む。思わず、声を上げそうになる。
そこは、じめじめとした、小さな部屋の中だった。正面には鉄格子。ぽっかりとした窓にも、鉄格子。床も壁も天井もレンガ造りで、何も道具がおいてない。これをひとことで表すとすれば・・・
”牢獄”しかないだろう。部屋の隅にはところどころ、コケが生えているところがある。
風が吹いていない。窓からは、ぽっかりとしたつきがのぼっている。何時間、いや、何日気絶していたのだろう。
となりには、すやすやと寝息を立てて眠る翔の姿。少し安心した。
「ねぇ、おきてよ」
そういって翔をゆする。翔は眠そうな目をこすりながら、こちらを見る。
と、そこに、こつんこつんと、一定のリズムをたもった音が。