~斬首な情報屋~ 4
と、その時、ブラックを飲んでいた男がニンマリ笑って、
こっちの方を見てきた。
「はは、アンタ、ワテと同じ身長やねんな!
そんな気にするなや!」
「あ、HAHAHA…。」
「…某クン?なんか反応が死んでるわよ?」
「いやぁ…関西人のノリはようわからへん…。」
「しかも口癖伝染してるし…。」
そのブラックを飲んでいた男は俺の肩を軽く叩く。
かなりフレンドリーな人だ。
まぁ、おそらくこの県には滅多にいない人種で有ろうが…。
「ワテは鴨崎涼太朗といいますんでね。歳は21ですわ。
以後よろしゅう。」
「は、はぁ。。。」
「某クンはちょっと人見知りするタイプだから、
最初からあまりフレンドリーはきついカモね。
ま、手加減してね。鴨ちゃん。」
「あ、そうなんや。いやぁ、悪いことしたなぁ!
ま、一ヶ月もすればもうアンタも関西のノリやからな!」
「へ…ヘイ…。」
鴨崎は以前俺の方を叩きまくる。
やたらとボディタッチを好む男らしい。
千秋はそれをほのぼのと見ていたが、
やがてもう1人の男がオレンジジュースを飲み終えこっちを見た。
…見た目はごついのにオレンジジュースとは…。
「千秋。」「ん?あぁ、飲み終えたの?」
「そこにいる男はまた引っかけてきたヤツか?」
「ちょっと、兄ちゃんっ!これまで引っかけたこと無いでしょ!」
…兄ちゃん?
「…誰?」
「私の兄貴。春風 夏樹っていうの。」
「へー。…似てないな。」
「俺は母親似で、こいつは父親似だからな。
今言ったとおり、俺は夏樹だ。どうとでも呼んでくれ。」
「おすすめは「なっち」ね。」
「…千秋。」「はは、ゴメンゴメン。」
千秋はいつものように軽い笑い声を上げると、
俺の方を見た。
「兄ちゃんは握力83で、ボール投げは74m。
100mは10秒49。
経験スポーツは…ほぼ、全部ね。」
「全部って…ゲートボールはさすがに…。」
「前、私のおじいちゃんと練習していたわ…。
…カーブまでかけれていたし。」
「…ゲートボールで曲がる玉なんて打つなよ…。」
夏樹は俺の方を見たがすっと手を出してきた。
握手と言うことらしい。
「よろしく。」「あ、はい…。」
そして、こうなると残る人はただ1人。
…正午になり、外は熱そうに蒸気を出しながら光っている。
アスファルト、埃。
何もかもが違う世界のように見えた。
それは今出会っている人間があまりに知らない人だったから…。
そして、その中でも一際なのが…。
「よろしく、某さん。」
「あなたは…?」
「私は道元千里、歳は二十歳。
…どうやら私の身長に驚いているみたいね。」
「まぁ、それはそうでしょう…。」
元カノはせいぜい150行くか行かないかである。
…いけない、嫌な思い出を思い出してしまった。
俺は首を勢いよく振る。
「と言うわけで、私もこのメンバーだから。
以後よろしくね。」
「はい。」
一通り、自己紹介が済んだ後、
5人は一つのテーブルの周りに座る。
上には換気扇のようにプロペラが回る。
外では車が忙しく走る。
そんな忙しい6月の初めにいる中、
この空間だけは物静かに時が過ぎ去っていた。
「では、始めましょうか。千秋、今回の件は?」
「千里さんは知っているかと思いますが、
マペット・チルドレンの活動が本格化してきました。」
「あぁ、あのウザイ集団のことやね。
今回は何すんの?」
「う~ん、まぁ、幹部と思われるメンバーが見つかったので、
その人を捕らえるって言う仕事をします。」
「ふうん。その人の名前は何て言うのかしら?」
…一呼吸置いて千秋は一枚の写真と、
以前俺に見せた情報の用紙をセットにして机に置いた。
「『川崎沙耶』と言うらしいです。」