32話
扉を開けるとまず異様な気配が流れ込んできた。
次に目の前に広がっていたのは十字架が描かれた礼拝堂。
異様な気配がするのは礼拝堂という少し違う場所である事と・・・・
この奥にいる者が放つ気配だろう。
三人の足音が人気のない礼拝堂にこだまする。
みなそれぞれの武器を手に構え、言いようもない恐怖に耐える。
――情けない
アジトの中であれだけ一流の【職人】と言っていたくせに・・・
今こうして震えを押さえ込むので精一杯だ。
アイさんもヴァルダも・・・
「三人・・・数で攻めようという策・・・」
声の主は天井から吊り下げられたシャンデリアの上に立っていた。
彼は背中に長い銃を背負っていた
あれがこいつの武器(えもの)・・・
ヴァルダ「オメェも職人か?」
「あぁ・・・」
ヴァルダ「よっしゃ!、さっさと倒させて・・・ぉ?」
二人の会話に強引に入り込んできたのはアイ
彼もヴァルダと負けないくらいの気迫を放つ。
アイ「私とやりましょう?」
「女性と戦うのか・・・あまり気はすすま・・・」
「!?」
口の動きが止まった。
アイの投げた手裏剣は相手の頬をかすり、奥の壁へとささった。
アイ「女だからってなめないで。怪我するわよ?」
「面白い、僕の名前はデストラク 手加減は・・・・」
「無しだ!」
32話 神の間の激闘
アイは手裏剣を取り出すと間髪いれずにデストラクへと向けて投げつける。
デストラクは最初不意を狙われたものの、さすがは職人というところか。
完全に攻撃を見切っている。
それどころかデストラクはもうアイの弱点を理解していた。
弱点であり、彼にとって有利な展開にもちこめる接近戦へと。
チェイル「アイさん!!」
敵が狙っているのは銃先につけたナイフで刺す事。
彼女は気づいているのだろうか・・・
いつも返すはずの返事もなくただあたりもしない手裏剣を投げつけるだけ。
デストラク「貫く!」
デストラクは体重を全て前足にかけ、勢いよく武器を前に突き出した。
アイ「きゃ!?」
赤い血が周囲に飛び散ったが、かすっただけだった。
アイは突きを武器でかわし至近距離から武器を投げつける作戦を思いついたのだ。
突きはかすったものの手裏剣は見事に相手の肩にささっていた。
デストラク「くっ!!」
ヴァルダ「よっしゃぁ!後は俺がとどめを・・・」
敵がひるんでいる隙を狙いヴァルダが距離を詰めていく。
ヴァルダ「必殺!危機一っ発!!」
鈍い音が空間に響く。
デストラクは片腕を犠牲にし、攻撃を受け止めた。
そしてもう片腕で照準を合わせていた。
デストラク「肉を切らせて骨を断つという言葉を知らないのか、君は?」
一発の銃声。
しかし銃口はヴァルダとは見当違いの方向を向いていた。
ヴァルダ「すまねぇ チェイル!」
チェイル「同じような事は前にもありましたからね」
軽く地を蹴り鎖をあやつって銃口を無理やり狂わせていた。
デストラク「小癪なマネを!!」
少し頭にきたらしい。
口調も変わり、殺意がさらにむき出しになる。
その直後デストラクの背中が爆発した。
デストラク「うぉぉ!!?」
チェイル「あの爆発は・・・」
アイ「爆発手裏剣 蒲公英」
ヴァルダ「すげぇ・・・」
ヴァルダはこれを見るのが初めてらしい。
口をぽかんと開けている。
アイ「どうしたの?私と闘るはずでしょ?」
ヴァルダ「アイ・・・怖っ!」
チェイル(でも可愛いかも・・・)