31話

「罠かもしれない・・・」
確かに僕達の師匠はそう言った。
でも・・・・僕は恐れない、この歩みを止めはしない。
僕自身の目的を果たす為に・・・








      31話 誘う者





太陽が沈み、一日の終わりが近づいてくる。
この時間が一番得意な時間。
ヴァルダもアイさんもそれは同じ。
いつもならばれないように侵入するのだが、今回は身を隠す必要はない。


ヴァルダ「いくぜ!」

合図と共に一斉に動き出す。
建物の周囲を囲んでいる塀を軽々と飛び越え、建物内部へと走る。
入り口近くまで差し掛かった時、白衣の研究員がこっちに気づく。
彼等はあわてて建物へと逃げ込み、入れ違いになって武装兵が現れる。

彼等が銃を構える前にヴァルダが強引に突破していく。

チェイル「今回は武装兵が多いですね。」
いつもの警備機械はどこにも見当たらない。
銀色と白を混ぜて割ったようないかにもハイテクな鎧に身を包んでいる。
アイ「予告の上で来たのだから相手も相応の準備はするわよ」
―そう、見間違えそうになるが目の前に立ちはだかっている相手は機械じゃない。
              
          ・・・それぞれの思いがあって生きているんだ。

だから・・・

                  殺す訳にはいかない!!


「止まれ!!」

彼等の叫びを無視し、アイは手裏剣を相手の目の前で爆発させる。

硬直し、動きが止まった一瞬の内にチェイルとヴァルダは駆け抜ける。
少し遅れてアイが後ろに何かをばら撒きながら二人の後を追う。

ヴァルダ「何を撒いているんだ?」

アイ「まきびしっていう足止め用の物で踏めば爆発するしかけになってるの」

後ろを振り返ってみると確かに足止めになっている。
追いかけてくる気配はない。

チェイル「何か・・・少しかわいそうですね・・・」

アイ「何言ってるの?かわいそうって・・・」

チェイル「いや・・・彼等の大概はGDSの社員ではなく金で雇われた輩なんです。
今はどこもかしかも就職難で貧しい暮らしを送っている者も多くて、奴等はそこにつけこんで大量に人材を集めるんですよ。それも簡単に切り捨てる事だってできるくらい人材は余っているんですよ、彼等は文句も言えず、ただ生きる為に必死なんです。
侵入者を殺せば・・・多額の報酬を得て、餓える事もなくなる、なのに・・・」

ヴァルダ「何言ってやがる。だからこそ今のGDSをぶち壊すんだよ。
あのエネルギー産業を今の独占状態から解放してやれば高額なエネルギーの税も無くなる。それだけでも大分奴等の暮らしも変わる。
それに俺達は金持ちじゃねぇ、政治家でもねぇ。
金を皆に配る事も今の重税を減らす事も無理だ。
でも俺達は【今】を壊す力があるんだよ。
悲鳴をあげる奴等の代わりに力を振るう事ができるんだ。
それだけを考えて戦えばいいんだよ」


    え・・・?                 嘘!?

                  あれ・・・?
           何で?

チェ&アイ「ヴァルダがまともに話してる・・・」

 
                  (何か拾い食いでもしたんですか・・・?)
        

            (頭でも打ったのよ、多分・・・・)



チェイル「そうですね・・・」


ヴァルダ「・・・さてと、あの扉にでもいるんじゃねぇか?」
ヴァルダはまっすぐに続く廊下の果てにある扉の事を言った。

アイ「そうね・・・」
アイもチェイルもわかっている。
あの扉の向こうから尋常でない殺気が溢れている事を。


あっという間に僕達は扉の前にたどり着いた
この先にGDSの【職人】が居る・・・



チェイル「開けますよ・・・」





激戦が始まる・・・

このページについて
掲載号
週刊チャオ第261号
ページ番号
33 / 39
この作品について
タイトル
チェイルの冒険
作者
ココア(3段アイス,ソード)
初回掲載
週刊チャオ第236号
最終掲載
週刊チャオ第274号
連載期間
約8ヵ月24日