28話
~フウの部屋~
常夜燈によって照らされた部屋。
この部屋の主はシングルチェアに座り、煙草を吸っていた。
その一定のリズムで浮かぶ煙。静かに刻む時計の針の音。
彼は自らが座っているチェアを中心にいつもと同じ部屋を見渡す。
常夜燈と同じ色に染まった壁。
棚には自分の趣味である年代物のお酒がたくさん並べられている。
最新式の壁かけテレビも今は静かに待機している。
そしてベットの上には・・・・
フウ「チェイル・・・」
彼はベットに横たわっている人物に語りかけた。
しかし死んだように眠る彼からは返事が無い。
彼はチェアから立ち上がった。
そして煙草の火を消し、ベットに横たわっているチェイルの頭に手を置いた。
自分の師匠からうるさく散々言われた言葉が脳裏に浮かんでくる。
――いいか? 職人は日々の鍛錬を積み重ねる事により、常人をはるかに超越した身体能力を引き出す事ができる。
今自分を含めたここにいる人物はこのような組織にいる影響もあり、生ける戦闘兵器とも大衆から言われている。
しかし、職人が生まれた真の理由は・・・
フウ「人々に尽くす為。自ら汗をかき、時には傷を負っても守るべきものを守る為に力をふるう。」
――これは全ての生き物に当てはまる。守りたいと心から願えば必ずやその結果は表れる。
逆に、この信念も無く戦う者は・・・
?「必ずやその力は自らに牙を向く。 なつかしい言葉だ・・・」
フウ「レビ・・・」
レビ「十年も前から僕達は同じ師匠の下で一流の職人を目指して日々鍛錬していた。
フウ「職人登録をされてからも俺達はタッグを組み、戦っていたよな。
レビ「歴代最強のコンビといわれていた僕達も・・・」
フウ「三年前だったな・・・」
当時の事を思い出す。
三年前のあの日・・・
レビ「反対だ! 何故GDSに今まで飼われていた者をノコノコと黒影に迎えるなぞ危険すぎる!」
フウ「こいつをいつまでもGDSの下に置いていけばそれだけ奴等の思う通りにシナリオが進む!」
レビ「といって迎えるのか?こいつが偵察役の可能性も0ではない。返すくらいなら殺すんだ!!!」
フウ「こいつはまだ何も知らない少年だ!そんな子を殺すだと!?ふざけるな!!」
フウ「あれから・・・結局入隊を許可された事に最後まで反対したお前は・・・」
レビ「タッグをやめて、ソロと新人育成に方針を変えた。」
フウ「それでお前はチェイルと戦わせたんだな?」
レビ「あぁ、お前のやり方と僕のやり方、どっちが正しいかを確かめる為にな。」
フウ「お前らしいな・・・」
レビ「結果は引き分け・・・しかし彼は交戦中にヴァルダの危機を救った。それも二度もな」
フウ「・・・」
レビ「チェイル・・・彼は確実に僕達の師である老裁の教えを身につけている。」
フウ「そうか・・・」
レビ「すまない 頼みたい事がある・・・」
フウ「何だ?」
レビ「ヴァルダさ。どうやら僕よりお前の方が師匠らしい・・・だからお前に・・・」
フウ「ざけんじゃねぇ お前は自分の意見を正当化する為にヴァルダを育ててきた。
それを今更あきらめてどうする気だ!?お前なら・・・」
レビ「・・・フウ?」
フウ「お前らしく最後までやりとげろ!!俺が育てたチェイルを抜く位に!!」
レビ「ふっ 変わらないな。」
フウ「変わる訳ねぇだろ 俺は俺だ。」
レビ「それじゃこの辺で僕は失礼するよ」
フウ「あぁ・・・」
フウ「チェイル・・・・お前の意志を確かめさせてもらった。
・・・・・合格だ。今はたっぷり休んどけ・・・」