第12話・旅立ち
「きっとキャスはすぐに出てくる。」
友の消えた『白い物体』に向かいそう誓ったティルは
その夜、じっと友の帰りをそれの前で待ち続けていました。
頬をつたう涙が、床にしみを作っていたのもつかの間。
ついに、流れ続けた涙は枯れてしました。
それと、ほとんど同時にティルの頭の中では
二つの考えが浮かんでいました。
「キャスはそこかほかの場所にいるのではないか?」
そうでなければ、キャスはもう・・・・・・
しかし幼いティルが後者を受け入れることはできず、
当然、前者を肯定する形になるほかありませんでした。
結果、当然のごとく浮かび上がる疑問、
「どこを探せばいいんだろう?」
残念なことにティルにはその答えを探すことはできず
そんな時、頼りになる友は、今は遠い昔の記憶ようにかすれてしまっている気がしました。
そこまで考えたところで、ティルは周りが明るくなってきていることに気がつきました。
遠い雲の周りから、太陽が姿をのぞかせていました。
いつもは輝ける太陽に憧れすら抱いていた彼も、この日ばかりはその姿を見たいとは思いませんでした。
一晩の悪夢、そう思いたかったのかもしれません。
そんな調子で彼が朝の訪れを眺めていると、
ガーデンの隅からかすかな機械音が聞こえているのに気付きました。
『ワープ装置』。
ソニックたちは確かそう呼んでいました。
『ほかのガーデンと一瞬で行き来ができるんだ。
でも、お前たちは使っちゃだめだぞ。』
そんな言葉を添えながら。
音のするほうを振り返ったティルの目に飛び込んできたものでした。
もはや、ティルにソニックたちの注意を意識する余地はありませんでした
アレに乗りさえすれば、キャスに会える!
それだけがティルの力になっていました・・・