第10話・
なぜか急に体中に走る悪寒、額をぬらす冷や汗、
そして、心臓は今まで経験したことの無いような量の血をティルの体へ送り込む・・・
「本能」というものなのか、ティルの体は必死に友に迫る危機をティルへと伝えていました。
「このままでは、いけない!」
ティルの本能が、そしてティル自身が出したその結論に従い
ティルはキャスを包むその『膜』をたたき続けます。
しかし、手が血ににじむほどたたいても、それはびくともせず、
ティルが感じる危機感は徐々に強くなってくるばかりでした。
キャスを包んでいく『膜』はついには完全に二人の間を遮ってしまいました。
一匹の「ティル」という名のチャオと、タマネギのような形をした「白い物体」、
夜のガーデンには、その二つとただ永遠と続くかのような静寂しか残りませんでした。
つい先ほどまで聞こえていたはずの、人工池の波の音も、遠くから聞こえる車の音も、
ティルの耳には届かなくなっていましたし、
もはや、ティルが友のためにしてあげられることは友が姿を消した「白い物体」から
また友が出てくるのを待つことだけでした・・・