第8話・月光

キャスがいない。
驚きのあまり、ティルが頭の中でそのことを認識するのには少し時間がかかりました。
ティルは生まれてこの方キャスとケンカしたことはありませんし、
何をする時もティルは、キャスと一緒でした。
おかげで、今の状態を理解できないティルの頭の上には
不安やら悲しみやらがごちゃ混ぜになった変な形の物体ができていました。


「キャスを探さないと!」
迷いに迷った挙句にティルが出せた答えはコレだけでした。
とは言っても、残念なことに、
ステーションスクエアのチャオガーデンの床は石畳で覆われており、キャスの足跡を追うなんてことはできませんし、
ティルが一時の眠りにつく時には出ていた月も、もう雲に隠れてしまっていました。
仕方なくティルは徐々に暗闇に目を慣なしながら、キャスを探し始めました。



「キャス~~、キャス~~!」

夜のしんとしたガーデンに、一匹にチャオの声が響き始めてから
どれほどの時間がたったでしょうか。
その間のティルは、と言えば、
池に落ちること3回の転ぶこと12回と
生来のおっちょこちょいも災いして、散々な目にあっていました。
そしてとうとう、友の名を呼ぶティルの声に、泣きそうになりながら鼻水をすする音が混じり始めた時、
大きな風の吹く音とともに、上空の月を隠していた雲が流れていきました。


ここぞとばかりに、月の光はガーデンの床に降り注ぎます。
そして、そこに浮かび上がった、ぼんやりと座るチャオの姿が
涙目になったティルの瞳に映りました・・・・・・

このページについて
掲載号
週刊チャオ第112号
ページ番号
8 / 16
この作品について
タイトル
チャオ×チャオ
作者
HEPA
初回掲載
週刊チャオ第103号
最終掲載
週刊チャオ第124号
連載期間
約4ヵ月28日