第4話・「彼」の言葉
風が頬を撫でては立ち去っていく・・・
そんな感覚がティルにはいつもより長く続く気がして
こんなことを考えました。
果たして、
自分が目を開いたとき自らを迎えてくれるものは
あの輝く太陽か、
はたまたあの硬い地面なのか・・・
でも、それを確認するのが怖くて
さらにギュッと目をつぶろうとしていたティルは
昨日、地面に墜落して泣いていた自分に
「無愛想だけど優しい彼」が
ぎこちなくかけてくれた言葉を思い出しました。
『え~と・・・ 男なら勇気を持て!』
『後は・・・・・・ 気合と根性だ!』
そのときは一呼吸おいてから
その言葉を言った「彼」も
言われたティルも
はたしてティルが男なのかという疑問に首を傾げましたが
些細なことは気にせずにティルは目をあけてみることにしました。
ところが
ティルがそんな決心を固め、
「彼」の言う『気合と根性』で目を開けようとしたとき、
なんともいえない鈍い音とともに
ティルの周りの風が動きを止めてしまいました。
ティルが何が起こったのか理解できずに目を開けると
つい先ほど自分が飛び出した高台の下に
自分が倒れているのがわかりました。
・・・・・・と
そこまで理解したところで
ティルの体にひどい痛みが襲ってきました。
そこまできて、やっとティルは
自分が今日も飛ぶことに失敗した
ということを理解し、
悲しいやら痛いやらで
大きな声で泣き出してしまいました。
それを見たキャスは心配そうに声をかけ
もう一度チャレンジすることを薦めてみましたが
ティルにはとてもそんな気は起きません。
キャスはいつまでも泣き続けるティルに
どうしようもなくなると
悲しそうな顔をして
その場を離れていきました。