第3話・Fry
いつもと一語一句違わないキャスの言葉に
ティルもまたいつものように
「うん、行こう!」と答え、
さっそく2人はガーデン一の高台を目指しました。
キャスは全力疾走で
その高台につくなりうきうきした様子で、
置いてきぼりにされて、
まだ高台の中腹辺りにいるティルに向かって
「じゃあ、いくよ~~」と叫びます。
しかし、ティルがキャスのほうを見るか見ないかといううちに
キャスはもう地面をけり、宙に飛び出していました。
キャスはすいすいと宙を飛び
たまに旋回したり、ティルに手を振ったりしていますが
高台を登るのに精一杯のティルは
当然、手を振り返す余裕はありません。
結局、やっとのことでティルが
高台の頂上についたころには
キャスは高台から遠く離れた地面に着地していました。
ティルが登りきったのを見ると、
キャスはティルに向かって叫びました。
「今度は、ティルの番だよ~!」
その言葉を聞くとティルは
緊張した面持ちで高台の端へと歩き出します。
その場所から上を見ると
もう真上近くまで上がりかけた太陽が
自分を照らしているのがわかります。
いつだかティルがキャスの飛んでいるのを見て、
あの太陽の近くに自分も行きたい。
と、思ったのがこのトレーニングのきっかけでしたが、
毎日のトレーニングで
高台から飛び立ったティルを
迎えるものは、その太陽ではなく高台の下の地面でした。
毎日の失敗を思い出し、
ティルがなかなか踏ん切りをつけれずにいると
「がんばれ~」
とキャスの声が飛んできます。
ティルが昨日も一昨日も
その声を聞いて、失敗したのは事実ですが
不思議とティルはその声を聞くと
自分もキャスのように宙を飛べるのではないか、と思えました。
そしてついに、ティルはギュッと眼をつぶり、
思いっきり地面を蹴りました。
頬を撫でる風が自分が宙に浮いていることを
ティルに教えてくれます。