「トビは空を飛びたい?」「いつか本当に飛びたい?」
幼い頃、親にぶつけられた言葉。
「もちろん!どんな手でも!」「うん!もちろん!」
ぶつけ返した言葉。

「トビは空を飛びたい?」「いつか本当に飛びたい?」
最近、親にぶつけられた言葉。
「いや。どうせ自分では飛べないよ。」「どうせ無理だろ!」
ぶつけ返した言葉。

いつから、自分で飛ぶと言う束縛的な考えになっていたのだろう。
いつから、自分で飛べないからと言って焦っていたのだろう。
いつから、自分の「夢」を忘れていたのだろう。

そう。

自分の夢は「空を飛んでみたいこと」だ。
幼いときからの夢だったんだ。
単純だけど、力強い、一生消えない夢だったのだ。

そうだ。何故、それを忘れていたのだろう。
自分に頼らない癖して、自分で何とかしようとして、挫折して、
こんな気持ちになっていたのだ。

今なら分かる。あの時、誰が悪かったのか。
…それは…まさしく…。



「…で、君の答えはなんだい?」

自分は答えた。

「いいえ。例え、どんな方法でも空を飛びたい!」

自分はまくし立てるように答えた。

「そう!その言葉を待っていたのよ!」

おかまなチャオがうれしそうに答える。
はねっちもにこにことした顔を見せる。

自分は決心した。
それは自分に対する、そして空に対する挑戦だ。

「俺は飛ぶ。
 死んで天国に昇る前に、空から地上を見たい。」



その日から自分はとある練習を重ねた。
飛行場という飛ぶにはあまりに都合の良い施設で。

「そこのは違う!あなたは馬鹿なの?
 いい加減感覚を覚えなさい!」

厳しく威厳のある指導。しかし、自分は屈することはなかった。
これで自分の夢が叶うのだ。これで自分の夢が叶うのだ。
この壁を…この壁を乗り越えれば、
必ず夢にたどり着けるのだ。



…時は経ち1ヶ月後。

「それでは、テストを行います!」

…『テスト』。前の悪夢を思い出させる。
…いや、自分の力で行けるはずだ。絶対に。
ブルーになっている自分の心を鼓舞させる。

「次!トビ!」「はい!」

自分の頬を軽く叩き立ち上がる。
飛行機の免許取得試験だ。
そう、自分は「羽」を飛行機に託すことにしたのだ。

ゆっくりと座席に乗る。
自分は指定通りのボタンを押し、操作を始める。
…一つ一つを慎重に操作をする。
そういわれ続けたので、自分もしっかりそれを守る。
横からは、審査の人が操作を見守っている。

そして、何事もなくテストは終了した。



「…結果を発表します」

一週間後、結果が発表された。
周りを見渡すと、はねっちもいた。
かなり緊張している。実際は自分の問題なのに、彼は…。
…。真友か…。

と、その時、自分は聞いたことのある一つの名前を聞いた。

「合格者、……。……。…トビ!」
「は…はいっ!」

…合格。合格。合格!!

驚きから歓喜へと自分の心を変えた。
合格発表にははっきりと、自分の名前が写っている。

その時、初めて俺は生まれてから羽に感謝した。
これがなかったおかげで、
こんな喜びを、手に入れられたのだ。
そして、自分はまた一つ、道を進み始める。

悲しみは遙か遠く、
これからは真実に向き合って、進んでいく。



そして、時は過ぎ…。

今、自分はパイロットをやっている。
空を飛んでいる。夢が叶ったのだ。
飛行機を拭きながらふと、手紙を書きたくなった。
そう、彼奴に。

『俺の真友へ
 
 俺は最初自分を見失っていた。事故のことでさらに。
 自分は飛べないと言うコンプレックスでつぶされていた。
 それを解放してくれたのはおまえだった。
 誰よりも自分を正直に見つめて、伝えてくれた。
 おまえにどれだけ助けられたのか。計り知れないよ。

 自分はいま空から帰ってきたところだよ。
 曇り空。それは危険な雲さ。
 でも、それを超えれば必ず晴れになる。
 そう信じて進んでいるんだ。
 
 じゃ、大切な真友。又会おうな。 トビ』

自分は手紙を送った後、ふと空見上げた。
曇り空の垣間から光が差し込み始めていた。

「やっぱり、持つものは…。」

足りないという現実。
それを支えてくれる真友。
そして、自分が追い求める、夢。

これさえ有れば、どこへだって行ける。
生きて、進んで、いけるのだ。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第317号
ページ番号
3 / 4
この作品について
タイトル
チャオとヒコーキ曇り空割って(08ver)
作者
それがし(某,緑茶オ,りょーちゃ)
初回掲載
週刊チャオ第317号