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予想外のノリで、ライトカオスは怪獣めがけ飛んでいった。
怪獣の鼻先で空中停止したと思ったら、その鼻先を右足でキック。驚くことに、怪獣がよろめいた。
右によろめいた怪獣の鼻の下に素早く回りこみ、もう一度右足でキック。今度は、下から思い切り蹴り上げた。
顎を蹴りぬかれた怪獣は、バランスを崩し知り餅をつくような格好で倒れた。その際、怪獣の足元にあったコンビニがぺしゃんこにつぶれた。
「はーっはっはっは! 怪獣だろうがなんだろうが、私の敵ではないのだよ! それ、もう一丁!」
空中でひとしきり笑った後、よろよろと起き上がる怪獣に近づき追撃体勢に入る。
ライトカオスは、空中を自由自在に移動し、怪獣の懐に潜り込み、お腹にラッシュラッシュラッシュ。目にも止まらぬと言うか、速すぎて何をしているのか分からない。
怪獣は、ぐぎゃあぁ、とか、ぐぎょおぉ、とか呻いているだけで、反撃すら出来ない。
「さぁ、そろそろフィナーレだ! 君に私怨は無いが許してくれたまえ! なに、来世では私のような超絶ハンサムに生まれる可能性も無きにしも非ずだ! さらばだっ!」
怪獣と距離を離したライトカオスは、両手を前に差し出す。すると、小さな光がその手に集まり、やがて大きな光の球体へと成長していく。
数秒もしないうちに、光の球体は怪獣を飲み込むほどの大きさになった。
「これが、ライトカオスの力なのか……」
強いなんてものじゃない。次元が違う。なんせ、自己紹介含めたったの十二行であの巨大な怪獣を追い込んでしまったのだから。
ライトカオスは、狙いを定めた。よくは分からないが、あの光の球体にはものすごい攻撃力が秘められているに違いない。
「くらえーっ!」
ライトカオスが、光の球体を怪獣に向けて発射……は、しなかった。突如、凄まじい勢いで収縮を始める光の球体。
数秒もしないうちに、光は消滅してしまった。
「い、いかん。カラータイマーが……」
「どこにつけてる、そんなもん」
へろへろと、さっきとは打って変わって頼りない飛行速度で、ライトカオスが俺の目の前に降りてきた。
よく見ると、ライトカオスの頭上に浮かぶ光の玉が、点滅を繰り返していた。
瓦礫が散乱する中、仰向けで倒れこむライトカオス。
「久しぶりの戦闘で、ハッスルしすぎてしまったようだ。私はもう戦えない、後は頼む」
「無理言うな。どうやって倒せと言うんだ、あれを」
先ほどライトカオスが与えたダメージが残っているせいか、攻撃してくる気配の無い怪獣。しかし、時間が経過して体力が回復してしまったら、俺一人では夢オチ以外勝てそうに無い。
「心配要らない。こんなこともあろうかと、秘密兵器を用意しておいた。君には、それを使って戦ってもらう」
「そんなもの、どこにある」
「ライトカオスになれば、空間転移などお茶の子さいさいだ。私に触れたまえ、一緒に行こう」
「ご都合展開、万歳」
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