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「せいやっ!」
 リュウが、気合の一声と同時に、この試合三度目の右ストレート。アモンは、この瞬間を待っていた。大振りなパンチを左手だけでしっかりガードする。ぽてっ。間髪入れずに、お返しとばかりに右ストレート。
 だがリュウも、大振りな攻撃のあとのわずかな隙を狙われているということは、さきほどの攻撃ですでに理解している。パンチを防がれた瞬間、素早く左手を上げて、ガードの体勢を取る。そして、アモンと同じように左手だけで、反撃のパンチを防いだ。ぽてっ。
 それこそが、アモンの狙いだった。
「かかりましたねっ!」
 自分の右パンチをガードさせ、リュウの意識を(アモンから見て)右に意識させると同時に、左側のガードをがら空きにする。全て上手くいった。
 あとは、強烈な一撃を叩き込むのみ。アモンは、ほんの一瞬体を沈め、力を蓄え、左手を力の限り振り上げる。アモンは、この一撃で決めるつもりでいた。
 だが、フィニッシュになると思われた強烈なアッパーは、リュウに当たることなく、豪快に空を切った。
「なに!?」
 驚きのあまり声を上げたアモンが見たのは、自分の遥か頭上にいる対戦相手の姿だった。
 リュウは、アモンの繰り出した必殺のアッパーを、道場の天井ギリギリまで到達するような大跳躍でかわしたのである。ここまでの跳躍を可能にした要因は、リュウの背中に付いている、大きな翼の羽ばたきである。
「くらえっ!」
 一瞬、空中浮遊状態だったリュウは、空中でもう一度翼を羽ばたかせる。今度は、落下速度を高めるために。アモンに、より強烈な一撃を食らわせるために。
 猛スピードでアモンめがけて落下、いや、突進していくリュウ。振りかぶった右の拳は、この試合四度目の右ストレートを予告していた。
「必殺!降竜拳(こうりゅうけん)!」
「くっ!」
 予想だにしなかった頭上からの攻撃に、アモンは両手でガードを固めることしか出来なかった。加速していくリュウと、待ち受けるアモンが、激しく衝突した。ぽてっ。
 お互いに、最初の立ち位置の辺りまで吹っ飛ばされ、リュウはうつ伏せの状態から、アモンは仰向けの状態から、それぞれのそのそと起き上がる。
「素晴らしい、これがカオスの力か。俺を満足させる、強き者。ついに、見つけたぞ」
「貴方の身のこなしは、正直予想外でした。貴方は、他のチャオとは少し違うようですね」
 闘いを通じて、お互いを少し理解し合えた瞬間だった。勝負の世界に咲く、一輪の友情の花。あぁ、美しきかな。
「ところで、アモン。君との楽しい闘いを今すぐにでも再開したいのだが、さっきから一つ気になっていることがあってだな」
「貴方もですか。実は僕も、さっきから言おうと思っていたんです」
「話が早い、さっさと吐き出して、お互いに闘いに集中しよう」
「同意です」
 二匹とも、何か言いたいことがあったようだ。一旦、試合は置いておいて、二匹ともこっちを向いて大声で叫んだ。
 ……ん? 『こっちを向いて』って……。私にですか!?
「さっきから『ぽてぽて』うるさいんじゃボケー!」
「さっきから『ぽてぽて』うるさいんじゃボケー!」
 ちょ、ちょっと待ってよ! 一体、何のことだ! 何で私が怒られているんだ!
「さっきの戦闘シーンで、お前がことあるごとに『ぽてっ』っていう効果音を挿入していることだ! 何だアレは!」
「そうです! せっかくの白熱した戦闘シーンが、あの変な効果音のせいで台無しです!」
 だ、だって、お前らチャオだぜ!? チャオ同士が殴りあったり、チャオが壁や床に叩きつけられたって、『どか』『ばき』なんて鳴るわけ無いだろ!
「そこは融通利かせて、上手いことカッコいい効果音を挿入しろ!」
「と、言いますかですね。効果音で乏しい場面描写をごまかそうなどというせこい考えをしていないで、僕達をよりカッコよく描写する努力でもして下さいよ。まぁ、貴方のような三流週チャオ作家には、効果音を使いこなすことも、的確かつ斬新な場面描写で話を盛り上げることも無理だということはわかっていますから、過度な期待はしないでおいてあげますがね」
 わ、私だって一生懸命やっているんだ!読者の皆様に、少しでも楽しんでもらおうと……、そ、それなのにっ(泣)
「あーあ、『(泣)』とか使ってるよ。引くわー、マジで」
「泣けば全て許してもらえると思っているんですか、幼稚園児並みの脳味噌ですね。そもそも、貴方が泣いてもキモいだけですし」
 ……う、うがー!(怒)
「泣いてダメなら、次は怒るってか。ホントにみっともないな」
「貴方のような三流、いえ、四流作家の書く作品などにこれ以上付き合っていられません。このお話はここで今すぐ打ち切り、茶番につき合わせてしまった読者の皆様に土下座して謝罪するべき……お、おや?」
 はぁー、はぁー。貴様ら……言わせておけば……。
「な、なんかやばそうな雰囲気が」
「えぇ……とうとう壊れたかもしれませんね」
 はぁー、はぁー。私は……私は神なんだ……神に逆らうとどうなるか……その身をもって思い知るがいいっ!



このページについて
掲載号
週刊チャオ第287号
ページ番号
7 / 12
この作品について
タイトル
カオスをねらえ!
作者
宏(hiro改,ヒロアキ)
初回掲載
週刊チャオ第287号