第１章　２４、金の息

アメジスト色だった瞳は、紅と蒼にくっきり分かれていた。
トルは傷は塞がったものの、まだ痛みはあるらしく、そのまま眠った。
この事件と共に、アメジストチャオ無差別大量虐殺事件は無くなった。
それからは、トルに帽子とフリルを外さないように言った。
もう慣れたのか、トルはそれをいつも身につけている。
けど、この子にパペットマスターの言葉を教えてはいけないと思った。
それは、限界まで追い込まれた時、この子がパペットマスターの力を蘇らせてしまったら・・・・・。
そう考えると、言おうという気持ちが失せたから。
この子に、掛かっている重荷を少しでも減らしてあげたいと思ったから・・・・。



オイノネ　「こんな小さな男の子が、大きな重荷を背負っている・・・。
　　　　　　なんて・・・可哀相なんでしょうか・・・」

オイノネは１筋の涙をこぼした。

チャロ　「トルにそんな過去があったとは・・・な・・・・」

ホタル　「私より、ずっとずっと苦しい思いをしてきたと思う。いや、してきた。
　　　　　あの時の出来事は、今でも夢に現れる。そうトルが言っていました」

トル　「・・・・ふぇ～ん・・・・・」

トルが泣き出した。たぶん夜泣きだ。

泣き声は普通のＣＨＡＯと同じく、無邪気で可愛かった。

ホタルがあやすと、トルはすぐに泣き止み、静かに眠りについた。

チャロはその光景を静かに見ていた。

いつもと違うところがある。

それはチャロが少し笑っていることだった。

そして就寝時間の１０時３０分。

男女別々の部屋（トルはホタルと）で寝る事になった。

両方ともめちゃくちゃ広く、男達は父、アガメヌノンやロンも一緒に枕投げ。いい年こいて何やってるんだ。

女性たちは静かに眠りにつく。

女性部屋―

ホタル　「わぁ、ふわふわ・・・。おやすみなさーい」

流石、王の城。ベッドなどは最高級品である。

チャロ　「すーっすーっ・・・・」

実は寝るのがとっても早い。

オイノネ　「おやすみなさい。今日の事は秘密ですね」

ホタル　「はい・・・。お願いします」

女性達はすぐに眠りに就いた。

一方、男性部屋―

枕投げ中。しかも枕は３０個はある。

もちろん、羽根入りの高級物。

カイオウ　「くらえ、赤鬼！」

アガメヌノン　「たまにはいいものだ！」

ロン　「父上、さっきから集中攻撃しないでください！！」

ロンの周りには１０個の枕があった。

チェス　「王に集中攻撃～！！」

わーーっわーっ！

エンエンは怪しげな機械から枕を発射している。

アインは眼にも止まらぬ速さで投げまくる。

他の奴らは投げまくっていた。

ハデス　「眠い・・・。おやすｍ・・・」

ばん！

ハデスの顔面に枕が当たった。

これにキレタハデスは、眠気がぶっとび、さっきよりもはりきっていた。

朝３：００

やっと男性陣は眠りについた。

チャロは皆が眠っているのを確かめた後、城の外に出た。

いつもこの時間、チャロはトレーニングをしている。

予定通り、今日も外で剣を振るう。

しかし、トルが着いてきていた。

チャロはその事に気づいていない。

トル　（チャロおねーさん何やるんだろ？）

木の影から、チャロを見ていた。

チャロはトレーニングを始めた。

トル　（よく見えない・・・）

がさっ

音を立ててしまった。

トル　（やば・・・！
　　　　　えっと・・・！！）

トルは帽子の中から小さな天馬の人形を出し、金色の息を吹きかけた。

なんと小さな天馬の人形は、命を宿し、動き出した。

トルは木の影から天馬を放つ。

チャロ　「なんだ・・・。さっきこの辺りから・・・？』

チャロは音でもう気づいていた。

すると、チャロの眼の前には天馬が出てきた。

チャロ　「天馬・・・・・！？」

チャロが驚いている所にトルが現れた。

トル　「ばぁっ！
　　　　すごいでしょ！そのペガサス、僕が命を授けたんだ」

チャロ　「何・・・？」

てか、トル。お前自分が居る事隠すためにテンマ放なったのに出てきてどーする。

天馬は、人形じゃなかったかのように草を食べたり呼吸をしていた。

トル　「生き返らせたりする事も出来るよ！」

チャロ　「トル、ではこの枯葉を元に戻せるか？」

チャロはそこらにあった落ち葉をトルに渡した。

トルは笑顔で頷いた後、金の息を枯葉にかけた。

すると、枯れ葉はみるみる緑の葉に戻っていった。

チャロ　「・・・・・すごいな。
　　　　　そういえばあとをつけて来ていたのか？」

トル　「うん！」

チャロ　（トレーニングはあまり見られたくないな。それより僕が気づかないとは・・・）

トルは天馬と遊んでいた。

天馬は野を駆け回っている。

続く