~宇宙の神秘編・戦いの果てに(後編)~ ページ7
「我らは肉体が無くても、魂さえ残れば世界の存在し続ける事が出来る。ココで言う霊体のようなものだ。しかし…」
ぷよぷよ浮かんでいる宇宙人の魂は少し間をおいて、
「しかし、まさかあんな威力の光線を撃つことのできる生物がいたとは…バリアーを張る間もなかった」
「私も始めて知ったよ、このガーデンにあんなチャオがいたとは。君はこれからどうするのだ?」
「体が無ければ何もできぬ…。新しい体を再構築するために、母船に戻る。もうココに来る事も無いだろう」
「そうか…残念だな。せっかく本気で戦えると思ったのだが」
「…我も残念だ。もう会う事は無いだろう、サラダ」
宇宙人の魂はそういい残し、天へと上っていった。
彼はああいっていたが、私は彼とはもう一度どこかで会えるような気がする。その日のために、これからも戦い続けて行こうじゃないか。私は待っている。
マスチャツは固く決心した。そして思った。サラダとは何か。
ブルーがこっそりマスチャツに耳打ちした。おそらく『さらば』といいたかったんですよ、と。
――チャオガーデンの遙か上・宇宙船――
「申し訳ありません、地球侵略に失敗してしまいました…」
大きな円形の部屋で、すでに新しい体(外見に変化はない)を手に入れた宇宙人が、ひざまずいて頭を伏せている。
その目の前には、黄金の王冠を被った、けれどもそれ以外ははひざまずいている宇宙人と全く代わりの無い宇宙人が、赤じゅうたんを辿った先にある大きな椅子に座っている。
「よいよい、頭を上げてくれ」
「失礼します…」
言われた通り頭をあげる、先ほどチャオレンジャー達と戦った宇宙人。
「実はなステファニー…お前には謝らねばならん」
チャオレンジャーと、マスチャツと戦った宇宙人の名前が今発覚。名前はステファニー。夜露死苦。つか普通にかけるじゃないかあ。
「…と、申しますと?」
「実はな、お前にはメダルを七つ集める事により侵略が可能となる、と話して送り出したが、アレは間違いだったんじゃ。本当は、『「モキュー」という名の星の「メダノレ」という特殊な石を七つ集める事によって、なんでも願いが叶う、というお話だったんじゃ。ホラ、チキューとモキューって似てんじゃん?だから間違っちゃったんじゃよ。すまんのぅ」
「そうだったのですか…。では、今度はモキューという星に?」
「いや、残念ながらその星はとうに過ぎておる。今からそこに行くのでは、一年以上かかってしまう…また長旅になるのぉ」
「私は構いません。他のみんなも納得してくれるでしょう。今度はそこへ向かいましょう」
「そうじゃなぁ…他に手がかりもないし…。んじゃいくか。面舵いっぱーい」
「…なかなか我らの求める星にめぐり合えませんね」
「すまんのぅ、ワシのせいでお前たちに迷惑をかけることになってしまって…。あぁ、ワシがあの時間違えてロケット花火を弾薬庫にぶっ放して大爆発起こして星を永久追放処分になったりしなければ…そのおかげでワシの元で働いていたお前たちまで…。二次被害も半端じゃなかったし。大量の煙が上がったせいで上を飛んでた飛行機が墜落とか。あぁ泣けてくる」
「自分を責めるのはやめてください。私たちは誰も船長のことを恨んでなんかいません。さぁいきましょう、第二の故郷を探しに」
「ぐすっ、ありがとうステファニー。よーし、しゅっぱつしんこー」
そんな感じで船は動き出した。第二の母星となる星を探して。
きっと今もどこかの宇宙を飛んでいるはず。君が流れ星を見つけたら、ソレはこの宇宙船かもしれないよ。…流れ星?
――翌日、チャオガーデンAM8:00――
「だから頼む!もう一度、いや二、三度でも、十度でも何回でもいい!あの技を見せてくれ!」
「Zzz・・・」
「頼む、三生のお願いだ!ほら、君が好きかどうかは知らんがペロペロキャンディーあげるから!」
カラッ、と晴れたムカつくぐらい気持ちのいい快晴の空の下。
昨日からレッドはずっとあの調子である。結局いつもどおり眠りこけてしまったイエローを何とか起こそうと必死なのである。
「やれやれ、一人でやってくれるならまったく問題ないのですが、何故僕まで手伝わされているんでしょう?」
そう呟くブルーの手には、睡眠覚醒の常套手段と思われるもの、目覚まし時計にブラックコーヒーの入ったカップ、眠気すっきりミント味のガムに、水の入ったバケツ、さらにはシンバルとありとあらゆるものがあった。
「ブルー君、目覚まし時計を渡したまえ!」
「はいはい…全く、僕はむしろ睡眠時間が大いに欲しいのですけどねぇ。昨日もヘンな事ばかりで疲れましたし。今日も今日とてリーダーのお守り役だなんて。僕も早く素敵なブリーダーさんの下で暮らしてみたいものです」
別に誰に言うでもなく、ブルーはぼそっと呟いた。