~宇宙の神秘編・戦いの果てに(後編)~ ページ6
「そこの腐った林檎、アレは何のつもりだ」
「はっはっは!いややはり試作品の域を出なかったな!あの程度で元に戻ってしまうとは、まだまだ実用化は遠いな!」
「そうではない、キサマは我を侮辱しているつもりか?」
「侮辱なんてめっそーもない!グリーン隊員なら君を退治してくれると思ったのだが、いや彼の胃は思ったより軟弱だった!あの程度の量の薬でダウンするとは、見込み違いだった!全く修行が足りんな!」
小瓶一個分の薬飲んで腹下すだけで済んだんだから奇跡的だろ。一ヶ月氷の中で暮らした男とタメを張るぜ。
傍らで聞いていたチャノキは思った。
「そうではない。あの程度のコメディアンをよこし、我が笑うとでも思ったか。我に対する侮辱行為だ」
そっちですか。
傍らで聞いていたチャクラバは思った。
「貴様の行為は万死に値する(何故)よって死んでもらう」
宇宙人は口を大きく開け、その前で両手でマルをつくる。
そして、なにやら精神集中。
「メイヨヘンジョウオメイバンカイ、チャミセデクイニゲオヤツハカール……」
目を閉じ、ぶつぶつ怪しさ120%の呪文を唱える始めえる。
「むむっ!なにやら大技の予感がぷんぷんするぞ!」
宇宙人の体から凄まじいオーラが染み出すのを見て、レッドは身構える。
「…キミノオカゲデジンセイドンゾコ、ナマハルマキハカンベンシテ…必殺!コスモスレーザー!」
詠唱(?)を終えると、宇宙人の口の奥が赤く光り始めた!その光は肥大化して行き、光が外に漏れ始める!
そして宇宙人の目がかっ、と見開くと同時に!光は一気に収縮し消滅、何故か目から光線が射出された。み゛ー。
「むむっ、危ない!必殺!イエローバリアー!」
レッドはレーザーに焼かれる前に、後ろで新たな死のカテゴリー、『寝死(寝すぎて死亡)』を開拓するぐらいの勢いで長時間連続睡眠記録更新中のイエロー隊員の影に素早く隠れた。
当然レーザーはイエロー隊員に当たるわけで。
ヴィヴィヴィヴィヴィヴィ…!
「!」
黄色い巨体が踊る踊る。レーザーを食らったイエローの体は取れたての魚みたいにびっちらびっちら飛び跳ねた。
宇宙人の放った「コスモスレーザー」には貫通能力が備わっていなかったため、レッドは無傷で済んだ。
代わりにイエロー隊員が、焼け焦げた豚のような姿になってしまった。
「はーっはっはっはーっ!その程度の攻撃、私には通用せんぞォ!」
イエローの後ろからひょっこり頭を出し得意満面に挑発。
「正義の味方がする行為ではありませんね。まぁ、今更ですが」
一部始終を物陰で見ていたブルーが呟いた。ちなみに他のチャオ達もみんな物陰に隠れている。とばっちりを受けないために。
…と、そのとき出荷前みたいなイエロー隊員が、なにやらモゾモゾと動き出す。その体からはまだ煙が出ている。
「…」
ゆらぁ~り…
この次に起きた出来事は、レッドとブルーを驚愕させた。なんと、イエローが一人でゆっくり立ち上がったのである。
「…イエローさんが……」
「イエロー君が立った…イエロー君が立ったぁ!」
はいぢ。
ゆっくり立ち上がったイエロー隊員は不気味な眼差しで宇宙人を見据え、いきなり大きく口を開けた。
「…?」
その行為には宇宙人も含め誰もがハテナマークを頭上に浮かべたが、次の瞬間そんなマークは吹っ飛んだ。
「…ラ゛ア゛ァァァァ!!」
イエロー隊員の、甲子園球場で阪神得点時の歓声と同音量の雄叫びと同時に、イエローの口から虹色に輝く極太の光線が発射され、ソレは一直線に宇宙人にめがけ高速で駆け抜けた。
「!」
派手な音を立てて、光線は畳を丸ごと消し飛ばした。
着弾点ではもうもうと煙が上がり、そこに宇宙人の姿は無かった。
誰もが驚愕し、ハテナマークなぞ吹っ飛んだ。んが、宇宙人はハテナマークどころか、体まで吹っ飛んでしまった。
「…い、イエロー隊員!凄いではないか!君がこんな能力を隠し持っていたとは思わなんだ、素晴らしいぞイエロー隊員!」
「…」
イエロー隊員は力を使い果たしたかのように倒れこみ、そのまま寝息を立て始めた。
「あぁ、まだ寝るんじゃない!君には聞きたい事がまだまだ…」
イエローを必死で起こそうとするレッド。そのとき不意に声が聞こえた。
「まさかこんな切り札を持っているとは…不覚だった」
その声はレッドでもブルーでもなく、チャノキでもチャクラバでもマスチャツでもなく、オモチャオでもなく。
消し炭にされたはずの宇宙人だった。
「…驚きました、貴方は…」
ブルーが言いかけて、後ろからでてきたマスチャつが続きを言った。
「君は、肉体が無くても生きる事が出来るのかね。いや驚いたなコレは」
ブルーとマスチャツのまえには、小さい妖精のような、光り輝く物体が浮かんでいた。
ソレは紛れも無く、宇宙人の魂だった。