～宇宙の神秘編・戦いの果てに（後編）～ ページ5

「どーだどーだ！私は嘘をつかないといったであろう！？侵略者によれば、グリーン君はどんどん強くなっているというではないか！…うむ、しかし容姿は多少考慮する余地がありそうだな！今のままでは怖すぎて、チビッコ達に逃げられてしまう！とにかく、今の気分はどうだねグリーン君？」
「…フフフ…」

レッドの言葉に、化け物と化したグリーンが反応した。

「フフフ…スゴイゾ…チカラガアフレテクル…！」

どうやら意識もあり、言葉も話せるらしい。
ただその声は、しわくちゃに枯れ地獄の底から響いてくるような声だった。

「コンカイバカリハレイヲイウゾ…。カラダガウズク…ダレカ、オレトタタカエ！」
「いいぞグリーン君！今回君が戦うべき相手はそう！そこにいる侵略者である！」

レッドはグリーンの横に立ち、ビシッ、と宇宙人を指差す。
グリーンよ、力を求めるがためにそのような姿になってもいいというのかッ！

「戦闘力１２００００…１４００００…１６００００…驚異的な速度で上昇中…」

自らの戦闘力をあっさり超えられたが、特に動じるというわけでもなく冷静に分析を続ける。

「ふはははは！さぁいけモンスター・グリーン！侵略者を千切り日本一決定戦にしてしまえ！」
「ガァァァァ！！」

すっかり魔物使い気取りのレッド。
レッドが合図をすると、モンスター・グリーン（レッド命名）は宇宙人に向かって猛突進。三角錐形の爪を振りかぶる。形状からして千切りは無理そうだ。
宇宙人は身構えた。だが、戦闘力はグリーンの方が上だと宇宙人自らも話していた。その場にいる誰もが目を伏せた。

その瞬間、白い体を槍と化した爪が貫き、カラテ会場辺り一面の床を真紅の世界へといざなった――。

…

ココはカラテ会場内のトイレ。ココで現在、グリーン隊員は何故か便座の上で奮闘する羽目になっている。姿もとっくに元に戻っている。
いつもの間抜け面のグリーン隊員だ。
扉の外では、ブルー隊員が壁にもたれかかって腕組みをしている。

「ふぬっ…くぉぉぉッ…！」
「情けないですねぇグリーンさん。いきなり腹痛に見舞われて敵前逃亡だなんて」
「だ、黙れッ…コレも全部レッドのせい…んおぉっ！？」
「…さて、僕はもう行きますよ？皆さんあきれ果てているでしょうから。何が起こったのか説明しないと。それではお大事に。…遅いでしょうけど」

そういってブルーはトイレを出て、レッドやカオスたちが待っている観客席へ戻っていった。その後しばらくトイレから不気味なうめき声がやむ事はなった。

さて、グリーンが宇宙人に襲い掛かった時、いったい何が起きたのか？ＶＴＲどうぞ。

…

その瞬間、白い体を槍と化した爪が貫き、カラテ会場あたり一面の床を真紅の世界へといざなった――。

…と誰もが思った。

会場内のチャオ達が、目の前が惨劇の現場になっている事を覚悟しつつ、恐る恐る目を開けてみるとそこには想像とはまるで違う光景があった。
宇宙人は、無傷だった。なぜなら、宇宙人の顔の数センチ程前で、モンスター・グリーンの振りかぶる爪が止まっていたからだ。てっきり宇宙人の体に穴が開いて、そこから血やら臓器やらがぐちゃみそになって（いや、宇宙人の人体構造など知ったこっちゃ無いが
ビデオの一時停止みたく全く動かない両者。振りかぶる爪も、あとほんの少し動けば確実に突き刺さる。

そのとき悲劇は起こった。

ぴ～、ゴロゴロ…

「う゛ッ！」

静寂が漂う会場内に、その音は存分に鳴り響いた。一体何の音？
笛の音？雷の音？鳥の鳴き声？何かが転がる音？全部違う。

「おぉッ……！」

正解は、グリーンが腹を下した音でした。

「う、うわぁぁッ！」

モンスター・グリーンは叫び、慌てて両手でお腹を押さえる。
何も考えずに押さえたため、自らの爪がお腹にチクリと刺さった。

「ぎゃあああ！」

その場にもんどりうって倒れるグリーン。
自分で自分にダメージを与える姿はまさに間抜けとしか言いようが無く、そのショックでグリーンの姿が元に戻っていった。
一回り大きくなっていた体はしゅるしゅるろ元の大きさに戻り、牙と手足の爪は消滅し、顔はいつもの間抜け面。
正真正銘、元通り。いつものグリーン隊員である。

「や、やばいッ、出るッ！」

幸いに変身時の皮膚が硬かったため、自らの爪で大怪我なんていう事態は免れた。
グリーン隊員はとっても元気に、トイレへ向かって走っていった。ブルーはその後を追い、レッドは何故か腰に手を当てて大笑いしていた。他のチャオは無論、全員呆れ顔。ＶＴＲ終了。

…

ブルーが会場へ帰ってみると、そこでは激しい口論が行われていた。
行っているのは、レッドと、宇宙人だ。