～宇宙の神秘編・戦いの果てに（後編）～ ページ4

ブルー隊員が、目的を遂行できなかった無念の錠剤を一人拾い上げ、そう言った。

「今グリーンさんが飲まされたのはですね、レッドさん曰く身体能力が上昇する効果のある薬だそうです。先ほど僕はドラッグだと思ったのですが、ドーピングに近いものかもしれませんね」
「バカモン！間違った解説をするでない！いいかねグリーン隊員？これは『超身体能力飛躍的上昇薬物（きっと僕らも飛べるはず）』と言ってだなぁ、要するに飲むだけで強くなれるというスグレモノなのだ！」
「信用できん！今すぐ解毒剤を渡せ！」
「君は全くわかっておらんなぁ。…君は先ほど彼らカオス三羽烏が戦う姿を見て、羨ましいと思っただろう？」
「…それが何だ」
「この薬のおかげで君は彼らと同等、それ以上の動きができるようになるのだよ！」
「……本当か？」

グリーン隊員、ちょっち反応。

「ああ本当だとも！自慢ではないが、私は人生の中で虚言を発言した事はただの一度も無い！エイプリルフールだって真面目に過ごしてきた！」
「それがすでに嘘じゃねぇか」
「ほぅら、早速効果が現れ始めたぞ！」

レッドの言うとおり、グリーンの体に異変がおき始めていた。

「お、おぉ？何だ…か、体が熱い…」

グリーンの体から、白煙が上がり始めていた。

「か、体が…焼けるッ…燃えちまうッ……！」

煙の量は次第に増えていき、口から目から、煙が漏れ出し天へと立ち昇ってゆく。

「…レッドさん？大丈夫なんですか？まさか殺人事件に発展するような事態にはならないでしょうね？」
「はっはっは！心配御無用、全て予測範囲内の出来事だ！多分な！」

そうこういっているうちに、ついにグリーン隊員の姿が立ち上る煙によって目測不能になってしまった。

「おいおい、大丈夫なのかよアイツ？」
「救急隊員を呼んでおきましょうか？」

チャノキとチャクラバも不安な眼差しで見守る。
そして、同じく不安な心境で見つめていたオモチャオが救急隊員（ついでにチャオレンジャーを追い出すための警備員も）を呼びに行こうとした時、煙の中から咆哮が響き渡った。

「うおあああァァァァ！！」

グリーン隊員のものだった。
咆哮がこだましたと同時に、煙の中から円柱状の光が天へと伸びていった。
駆け上がった光は、徐々に体積を肥大化させてゆき、それに伴い光の強さも強くなっていた。
やがて会場内が一瞬、完全に光に飲み込まれた。

「…う……」

みんな手を目の上にかざしすこしでも眩しさを緩和しようとしたが、しばらく目を開けることは叶わなかった。
そしてようやく視界が開けた時…。

「…うわっ、なんですかアレは？」

「アレ」を一番最初に見たのはブルーだった。その後他のチャオたちも次々と「アレ」を見ては、「うわっ」とか「ぎょっ」とか「いや～ん」とか、驚嘆の声を上げた。

「…チャクラバよ。俺はさっきからわけのわからない光景ばかり目にしてきて、思考回路が全く機能してくれない。お前の思考回路が正常を保っている事を期待して問うぞ。アレは何だ？」
「チャノキさん、お気持ちはよくわかります。問いに対する答えですが、残念ながら私も回答を持ち合わせておりません。とりあえず僕にもチャノキさんにも見えているのですから、夢でない事は確かでしょう」

「はーっはっはっはぁ！見事に成功だ！喜べ皆の衆！我が実験は大成功だ！明日にでも特許申請してくれようぞ！」

その場の全員の驚愕を誘い出した「アレ」とは。
目は釣りあがり、歯は牙へと変貌を遂げ、両の手足には鋭い爪が生えている。
頭部の形はダークカケチャに近いものがあるが、より先端が鋭くなっており、凶暴な印象を受ける。
そして頭の上に浮かぶポヨポヨはどす黒く変色し、ダークタイプのように無数のとげが生えている――。という、変わり果てたグリーン隊員の姿だった。かろうじてグリーンの面影を残している部分といえば、緑色の体色くらいだろうか。

「…強力な戦闘力を確認」

突然、宇宙人が喋りだした。その視界の先には、グリーンの姿。

「数値３００００…４００００…なおも上昇中。眼前のクリーチャーの戦闘力と思われる」

お前はスカウターか。そんなツッコミをするものは誰もいない。というかグリーン隊員、とうとうクリーチャー呼ばわりされてしまった。
マスチャツが宇宙人に聞く。

「宇宙人どのよ、その戦闘力とやら…４００００という数字は高いのかね？」
「我とキサマの戦闘力数値が現在１２００００前後…。クリーチャーの数値、なをも上昇中。８００００突破。このまま我らの数値を超える可能盛大」
「成る程…」

腕を組み、じっとグリーンを見つめるマスチャツ。
と、レッドがいきなり大声でわめき散らす。