~宇宙の神秘編・戦いの果てに(後編)~ ページ3

そういいながらレッドはマントに付いていたポケットの中から、一つの小瓶を取り出した。その中には、黄土色をした得体の知れない錠剤がぎっしり詰まっている。

「なんですか、それは?」
「ふふ、聞いて卒倒しろ!コイツは、私が密かに国立県立私立人命救助研究所で開発したベリーミラクルな薬!その名も『超身体能力飛躍的上昇薬物(きっと僕らも飛べるはず)』である!」
「ドラッグですか?」
「違う!コレはだなぁ、一粒飲むだけでたちまち…」
「研究所の名前が先ほどと違ってますよ」
「ブルー君、君はどうして人の話の途中で切りたがるんだね?他人の話しは最後まで聞く。習っただろう?私はそんな子に育てた覚えは無いぞ!」
「僕も育てられた覚えはありません」
「私も無い。だからそんなことはどーでもいいのだ!…まったく、どうやら君の頭ではこの崇高な研究結果の詳細を解説しても理解できないらしいな。仕方が無い、すぐに実験に移ろうではないか。百聞は一見にしかず、果報は寝て待て、早起きは三文殊の知恵というしな。さーて、手ごろな被験者は…」

そういってきょろきょろ辺りを物色。

その間、いままででぼけーっと漫才を見せられていたチャオたちは、

「なぁチャクラバ…。コイツら一体なんなんだ?」
「さぁ、私に聞かれても。しかし、ずいぶん賑やかな方たちですね」

マスチャツと宇宙人は。

「…我とキサマの試合はどうなったのだ?」
「まぁ、もう少し落ち着くまで待とう。なんだか慌しいものが乱入してきてしまったのでな。ま、何か面白いことをしてくれるかも知れんぞ?」
「…ふん」

オモチャオは。

「な、何がどうなってるチャオ~?あいつら一体なんなんだチャオ~?」

とりあえず会場全体が、突如現れたチャオレンジャー達によって混乱の渦に巻き込まれていた。
いつでもどこでも誰にでも迷惑という名の風を吹き込む、我らが正義の味方チャオレンジャー。万歳。

「被験者はっけーん!」

レッドが被験者を探している間少し静かで平穏な時間が流れたのだが、あっという間に吹き飛ばされてしまった。
どうやら手ごろな被験者を発見したらしい。

「この強靭な肉体、しぶとい生命力、頭の悪さ!君こそこの薬の最初の働き場所として相応しい!」

レッドが見つけた被験者とは――。涎を垂らし、これ以上ない極上の笑顔を浮かべてマリアナ海溝より深い眠りについているイエロー隊員に寄りかかり、コチラもだらしなく涎を垂らしてぐーすか眠りこけている、グリーン隊員に他ならなかった。

「皆の衆!全員私に注目したまえ!今からこの薬をグリーン隊員に投与する!するとアラ不思議!グリーン隊員の身体能力が大幅にアップし、そう!先ほどマスタード殿や異星人がやって見せたような事も可能になるわけだ!要は凄く強くなれるのだ!」
「マスチャツさん、ですよ」
「では行くぞ!実験レッツスタート!」
「…でもどうやって寝ているグリーンさんに薬を盛る…投与するのですか?たたき起こして無理やり飲ませるのですか?」

そんな疑問を投げかけたブルーを無視し、レッドは小瓶の蓋をキュキュッ、という音を立てながら空け…小瓶を、だらしなくあいているグリーン隊員の口の中めがけ思い切り振り上げた。
小瓶は持ったままなので、当然中に入っている錠剤達のみが口の中めがけ飛び込んでいく。必殺錠剤マシンガン。

「ぐぼぉッ!?」

放たれた錠剤達の照準は完璧で、八割以上もの数の錠剤がグリーン隊員体内進入のための最重要出入り口、口の中に飛び込んでいった。
そりゃそんな数の錠剤が、しかも寝てるときにいきなり飛び込んできたらのどに詰まるわけで。

「グリーン隊員!コレを飲みたまえ!」

レッドはどこからとも無く、夏の必須アイテム『コップに入った麦茶』をグリーン隊員に差し出す。氷が鳴らすカラン、という音がとっても涼しげ。
涼んでいる場合ではないグリーンは自分に一体何が起きたのか全くわからず混乱の渦中に突き落とされてしまったが、とにかく今は、この喉で大渋滞を起こしている謎の物体を流し込むのが先と判断し、レッドの差し出した麦茶を奪い取り勢いよく飲み干そうとする。
よく考えれば、吐き出せばいいじゃないか。しかし咄嗟に麦茶を差し出されてしまったため、思わず吐き出さずに飲み込めという指示を脳は下してしまった。哀れグリーン。

「ぜはーっ、ぜはーっ…」

何とか渋滞は解消され、錠剤達は無事目的地、グリーン隊員の胃へと到達した。全部。

「…キサマは、俺を殺す気かーッ!?」

何故自分は死に掛けたのか全く状況がつかめないが、目の前でニヤニヤ笑を浮かべるレッドを見てとりあえずコイツが俺を殺しかけたのだという事だけは理解した。

「殺すだなんてまったく人聞きが悪いにもほどがある!私は君をパワーアップしてあげようとしたのだよ!」
「何がパワーアップだ!言え、俺に飲ませたのは何だ!?」
「それは僕から説明しましょう」

このページについて
掲載号
週刊チャオ第118号
ページ番号
17 / 22
この作品について
タイトル
チビッコ戦隊チャオレンジャー!~宇宙の神秘編~
作者
宏(hiro改,ヒロアキ)
初回掲載
週刊チャオ第113号
最終掲載
週刊チャオ第118号
連載期間
約1ヵ月5日