~宇宙の神秘編・戦いの果てに(後編)~ ページ1
前回までのあらすじ。
チャオガーデンに突如現れた謎の生物、自称宇宙人。
ソイツはチャオレンジャーの前に現るなりいきなり地球征服宣言。何をどう勘違いしているのか、チャオレース一位入賞者に送られるメダルを七つ集めると願いが叶うとほざきだし、メダルをよこせと要求してくる。
地球征服など断固阻止、チャオレンジャーは宇宙人とチャオレースで勝負をするが、あえなく敗北。メダル宇宙人の手に渡った。
んが、当然メダルを集めても願いが叶うなんてこたぁなく。宇宙人が次に目をつけたのはチャオカラテ。
自称宇宙人は圧倒的な力の差でカラテ有段者達を次々と葬り去り、とうとう残るは地上最強のチャオ、マスチャツのみ。
果たしてこの勝負の行方は!?地球征服の行方は!?ついでにレッドの行方は!?
「いいだろう。全力で相手をさせてもらう」
そういって、マスチャツは両手を下げ、少しうつむいた構えを取る。
「はあああああ……」
マスチャツは全身に力を込める。渦巻いていた風が動きが慌しくなる。
ズオオオオオオ…!
低く唸り続けていた風の唸り声が、雄叫びに変わった。
それと同時に旋風は竜巻に変わり、触れるもの全てを切り裂くカマイタチと化した。
カマイタチの発生源であるマスチャツは何事もないようにカマイタチの中心で仁王立ちし、対戦相手を両目に捉えてはなさない。
宇宙人もまたマスチャツを視界からはずす事は無く、目の前に発生したカマイタチにも特に動じる事も無く、ただ睨み付けていた。
「…チャオじゃねぇ…」
チャノキが静かに呟いた。ごもっとも。なんつーか調子に乗りすぎた。ごめん。
「まぁいいじゃないですかチャノキさん。こんな光景はもうこの先一生お目にかかることは無いでしょう。もう細かい事はぜ~んぶ忘れて、じっくり二人の対戦を堪能しようじゃありませんか」
「いいのかそんなんで…」
呆れたチャノキが畳に目を向けると、宇宙人のほうにも異変が起こっていた。
「はおおおおお……」
掛け声こそ違うが、今宇宙人がとっている行動は今さっきマスチャツがとったものと同じ。宇宙人が全身に力を込めると、周りを渦巻いていた風が凶暴化した。
マスチャツがやって見せたことを、宇宙人は即座に真似をして見せた。今畳の上では、二つのカマイタチが踊り狂っている。
「…やはり君は面白い。君のような対戦相手は初めてだ」
マスチャツが言う。カマイタチの音で、二人が何を喋っているのかチャクラバたちには聞こえない。が、マスチャツと宇宙人だけは、互いのいうことがよく聞こえていた。
「…では、第二ラウンドと行くかね。宇宙人君?」
「君が望む永遠」
宇宙人的には『望む所』という意味を伝えたかったのだが、当然それは誰にも伝わらなかった。
とにもかくにも、僕らの宇宙船地球号を巡る、最後の戦いの火蓋が切って落とされた!…はずだった。
「あいや、待たれいぃ!」
どこからとも無く、なんとなく聞き覚えがあるような、というかあまり聞きたくないような、そんな感じの声がこだました。
「誰だ?」「だれだ」「誰だ!?」「だれでしょう」「誰やねん!?」「ダレンジャー」
その場にいる全員が辺りをきょろきょろ見回す。正体不明の声の主を探すために。
その間に畳の上では、ふしゅるるるぅ、と間抜けな音を出しながら暴れまわっていた二つのカマイタチが消滅した。
二人とも、闘争本能を大きく削がれてしまったのだ。
「あ!いた、あそこだ!」
チャノキが大声を出しながら、「CHAO道」と書かれた看板の上の屋根を指差した。
そこにいたのは、恐らく赤いマントを羽織っているチャオと思われる後姿。
それを見て観客席にいたブルー隊員&グリーン隊員が何故か頭を抱えてあきれ果てていたが、その理由は後に明らかになる。
と、今まで物陰に隠れて一応戦況を見つめていたオモチャオ審判が出てきて、その怪しげな後姿に向けて言い放つ。
「そこのチャオ!そんなところで何してるチャオ!危ないチャオよ!」
だが、屋根の上の赤い後姿は無いも反応を示さない。
「違いますオモチャオさん」
そう言ったのは、観客席から降りてきたブルー隊員だった。その後ろには、一日の生活を表にして医者に見せたら即、過眠症と診断されるであろうイエロー隊員を背負ったグリーン隊員の姿もあった。
「ち、違うって…何がチャオ?」
「彼自身が危ない存在なのですから、危ないですよと注意するのは全くもって無意味なのです。まぁ、そんなことはどうでもいいのですが。恐らく彼の性格上、こう言えば…」
ブルーは大きく息を吸い込み、そして叫んだ。
「お前は誰だ!?」
「HAHAHAHAHA!よくぞ聞いてくれた!」
赤い後姿はマントを思い切り翻し、とぅっ!と叫びながら屋根からジャンプ!すると見せかけて屋根を慎重に滑り降り、羽を使ってゆっくり降りてきた。
「…」