~宇宙の神秘編・戦いの果てに(中編)~ ページ1

超級四回戦、チャノキVS宇宙人

畳の上で対峙する両者。宇宙人は相変わらず無表情な卵目をただの一度も瞬きする事も無くただただ見開いている。
一方のチャノキは、顔にこそ出さないものの、内に秘めたる闘志を業火の如く燃え上がらせている。
合図が出ればすぐに攻撃に出る準備はできている。待っていろ。チャクラバの敵は俺が討つ。いや、死んではいないが。

「では始めるチャオ!準備はいいチャオか?」
「おう!」
「さっさと始めろ」
「わかったチャオ…。それでは位置について!よーい、ドンチャオ!」

明らかに間違った試合開始の仕方だったが、そんなこと彼らにはどうでもよかった。
チャノキはとにかく先手をとることを最優先とした。「よーい、ドン」の合図とともに目の前の異星人に向かって突進、勢いに任せ右の腕を振りまわす。
それはあっさり異星人にガードされたが、間髪いれず左の拳を相手の顔面めがけ放つ。しかし、それも異星人の右腕によってガードされた。
それでも、どんなにガードされようともチャノキは攻めの手を休める事はしなかった。
とにかく、ひたすら攻撃あるのみ。相手に攻める間を与えず、試合終了まで自分が攻め手でい続ける。それが、チャノキという選手である。
凍てつくようなボディカラーとは裏腹に、その心に秘めた闘争本能は相手が強ければ強いほど業火の如く燃え上がる。その闘争心で、今まで幾多の猛者達をなぎ倒してきた。

「おらおらおら!」

より一層激しい攻撃を休むことなく続ける。無論こんな戦い方をしていては体力が持たない。
いくらチャノキといえでも、いずれは疲れる。だが、それでよかったのだ。ペース配分など考える必要は無かった。なぜなら今までの敵は、チャノキが疲れるより早くみな倒されていったからだ。
しかし、今回の相手はそうはいかなかった。

「その程度か?」

思いもよらぬ言葉が、チャノキの耳に入ってきた。

「なにぃ?」

目の前の、今なおチャノキの猛ラッシュをガードし続けている異星人の口から、その程度か?という言葉が出てきたのだ。
だが確かに、目の前の異星人は全くダメージを受けている様子は無い。しかも、疲れすらしていない。
異星人の右手が下がれば、チャノキは左ストレートを繰り出す。しかし異星人は、信じられない反応の速さで下がっていた右手を上げ、チャノキのパンチを無力化する。
今度は逆に相手の左に隙ができたので右拳を振り上げるが、コレも簡単にガードされる。
上がダメなら今度は下、つまり下半身を狙って攻撃するが、パンチに比べてキックは隙が多い。チャノキが放つキックは全て跳ぶなりかがむなりでかわされた。
チャノキの方はいずれ疲れが来るが、目の前の相手は永遠にコチラの攻撃をガードし続ける。
圧っ倒的にチャノキが不利である。

「はぁ、はぁ…」

ついにチャノキのスタミナが切れた。先ほどまでより、大分パンチやキックの威力が落ちている。

「終わりだ」

そう異星人が呟くと同時、チャノキが撃ってきたパンチを両手で掴み、そのまま後ろに振り向きながらチャノキを思い切りブン投げた。

「おぉッ!?」

チャノキが空中でじたばたもがいたが、抵抗むなしく地面に激突した。その瞬間勝敗は決した。

「リングアウト!勝者宇宙人チャオ!」

オモチャオが右手に持っていた、赤旗が天に向けて掲げられた。宇宙人の勝利を宣言したのだ。
畳の外で、先ほどのチャクラバと同じようにチャノキが仰向けに倒れている。
チャクラバとマスチャツは、チャノキのもとへ駆け寄っていった。

「チャノキさん、大丈夫ですか?」

最初に声をかけたのはチャクラバだった。自分がされたのと同じように、チャノキに声をかける。

「…おぅ」

気の抜けた返事を返すチャノキ。

「チャノキ。残念だったな」
「マスチャツ…。あぁ、すまん」
「謝る事はない。…しかし、ヤツは強いな」

マスチャツが、畳の上で勝利のランバダを踊っている異星の者へ視線を向ける。

「強いっつーか…ありゃ反則だ。まぁ、チャオじゃない時点ですでにおかしいんだが…」
「しかし、敗北を種族の違いのせいにしてはいかんぞ。どんな条件だろうと負けは負けだ。この負けはしっかりと体に刻み込んでおけ」
「…わかってるよ。さて、もう俺達の出番は終わりだ。じっくり試合観戦させてもらうよ、大将」
「そうですね。それに、もしかするとマスチャツさんの本気が見れると思うとわくわくしてきましたよ。頑張ってください、マスチャツさん」
「ありがとう。…だが、今回は本気ではヤツには敵わないだろう」
「…え?」
「誰も見た事のない、本気の本気を出してやろうじゃないか」

マスチャツは、勝利のダンスをいつのまにかランバダからリンボーダンスに変更していた宇宙人を、静かな眼差しで、しかし鋭く睨み付けた――。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第116号
ページ番号
12 / 22
この作品について
タイトル
チビッコ戦隊チャオレンジャー!~宇宙の神秘編~
作者
宏(hiro改,ヒロアキ)
初回掲載
週刊チャオ第113号
最終掲載
週刊チャオ第118号
連載期間
約1ヵ月5日