~宇宙の神秘編・戦いの果てに(前編)~ ページ2
確かにいつもと違う所はいくつかあった。超級の面々はつい先ほど、三十分前にカラテ委員会のオモチャオにいきなり呼びつけられたのである。超級に挑むものが現れた、すぐに来て欲しいと。
そんなことは今まで無かった。普通は上級を制覇したすぐ後に超級に挑むなんてコトをするチャオはいない。戦いを終えたばかりで疲労もたまっているからだ。少なくとも一日は間をおく。
だから、上級を制覇したチャオが現れるとカラテ委員会から「上級制覇者が現れた。いつでも戦える準備をしておくように」と伝達が来るはずなのだ。
しかし、今回はそれがなかった。つまり、上級を制覇した直後に超級の門を叩いた事になる。
「よほど自信があるのでしょうか…?それとも何か作戦が…」
そうソファに座り考え込んでいるのが、―天空の守護神、チャクラバである。
「どんなヤツが来ようと、倒せばいいんだ。それだけの話だろ?」
トレーニングをやめ、チャクラバの向かい側にどっかと座り込むチャノキ。
チャクラバはまだ納得のいかな表情である。
「まぁ…それはそうなのですが…」
「うむ、その通りである」
ジャーッ!
そのとき、ちょうどトイレからマスチャツが出てきた。
「どのような敵が現れようと、自分達は自分達のなすべき事をすればいい。全力で相手をするのみである」
「…今のセリフ、トイレから出てきたんじゃなければかっこよかったんだけどな」
「うむ、そうか?」
こんな余裕も、自分達が負けるわけが無いという絶対の自信があるからこそである。
さて、もう少し汗を流しておくか。茶の木が再び鏡に向かおうとしたとき、控え室の扉が勢いよく開き、委員会のオモチャオが叫んだ。
これが、彼らの自信を揺るがす出来事の始まりを告げる合図だった。
「ま、マルカジリが倒されたチャオ!至急用意してくれチャオ!」
「何?」
それを聞いたカオスたちは驚いた。
マルカジリとは、超級の先鋒をつとめているチャオである。西瓜のような頭をしているためこのような名が付けられた。
カオスチャオではないとはいえ、その実力はトップクラス。故に超級の先鋒をまかされている。
自分達が呼ばれてからまだ三十分。彼がいとも簡単に倒されるとは、カオスたちは信じがたいものがあった。
「どうやら久しぶりに骨のあるものが現れたようだな」
マスチャツは静かに呟き、カオス三人集はカラテ会場へ歩を進めていった。
―チャオカラテ会場―
「ぐあっ!」
「勝負アリ!そこまでチャオ!」
そこではさらに信じがたい光景が広がっていた。
超級随一の暴れん坊、ブンブンノスケが敗北の判定を受けた瞬間だった。
敵は、腕をぐるぐる回し遠心力を頼りにパンチを繰り出す、「ぐるぐるパンチ」を放ってきた。ブンブンノスケはそれを両腕でガードしたのだが、そのまま畳の外へ吹っ飛ばされた。
「なんなんだアイツは?」
チャノキは呟いた。ブンブンノスケが派手に吹っ飛ばされたコトにも驚いたが、畳の上で仁王立ちしている、恐らくは挑戦者だろうと思われる生物の容姿にも驚いた。
何だアイツは?あんなチャオは見た事ない。
その異様な雰囲気を隠そうともしない、謎の生物を前にカオスたちは何をすべきなのか、見つけられないでいた。
「…貴様らが『カラテ』で最も強い者たちか?」
目の前の生物がそう聞いてきた。どうやら言葉は喋れるらしい。
「…あぁそうだ。君が今回の挑戦者か。うむ、実に面白い」
答えたのはマスチャツだった。
別に相手の事を詮索するわけでもなく、普通に答えた。
「我はこのガーデンにあるメダルを求めてはるか遠くからこの星に降り立った。メダルを手にするためには貴様らを倒す事が絶対条件。悪いが我らの崇高なる作戦のために犠牲になってもらう」
「ふむ…?まぁ要するに自分達に戦いを挑むのだという事はわかったが、メダルとは一体何のことだね?」
「貴様が腰に巻いている、それの事だ」
そういってマスチャツの腰を指差す。
そこには燦然と輝く強さの証、黄金のチャンピオンベルトが巻かれているのであった。
「あぁ、これの事かね。コレはメダルではなく、ベルトだ。いいだろう、君が自分達全員を倒す事ができたら、このベルトは君のものだ」
「ベルトでもボルトでもなんでもいい。さっさとよこせ」
「君が勝ち抜けたらな。よし、早速試合を開始しようじゃないか。…準備はいいか、チャクラバ、チャノキ」
「御意」
「オスッ!」
マスチャツの問いに、二人は力強く答えた。
「…ではこれから三回戦を開始するチャオ!中堅チャクラバ!宇宙人!前へ出るチャオ!」
「ちょっとまった、まってくれ」
試合開始を告げようとしたオモチャオにチャノキがストップをかける。
「何チャオか?」
「いや、宇宙人って…。アイツ、宇宙人なのか?」
「本人がそう言ってるチャオ…」
「それにしても宇宙人って…。他に呼び名は無いのか?」
「僕もそう思って、名前を尋ねたんチャオが…」
そこで畳の上の宇宙人が割り込んできた。
「我の名は明かす事はできない。