～宇宙の神秘編～ ページ7

「…ぎゃーっ！！」

グリーンの精一杯のリアクションに、他の二人も振り向く。

「…なんと…」
「…凄いですね…」

すると、ビックリ箱近くにあった左足が見る見る縮んでいき、そのまま体まで戻ってくる。今度は体が右足に引き寄せられるように移動してきて、十秒とかからないうちに両足はさっきまでと同じように、通常のチャオと変わらない形になっていた。
グリーンたちが数十歩かけて走ってきた距離を、謎の生物（自称宇宙人）は一歩で移動してみせた。

「…」
「…」
「…」

何事も無かったかのように、無言で隊員たちを見つめる瞳の前に、隊員達は動けなかった。

「…では、我は先を行かせてもらう」

そして再び足が伸び始め、今度はやしの木ゾーンから通常泳いでいくはずの洞窟入り口前まで足を伸ばす。

「まてまて！まちたまえッ！」

さっさと行こうとする謎の生物（自称宇宙人）にレッドがタンマをかける。

「なんだ。我はさっさと先を行かせて欲しいのだが」
「オモチャオ殿！コレはルール上反則ではないのかね？」

側にいた応援団兼審判員のオモチャオに判断を仰ぐ。
ほとんどのオモチャオはピンク隊員捕縛のために借り出されてしまったため、コースの脇で応援しているオモチャオの数はかなり少ない。

「で、でもっ、基本的には『指定された場所以外での飛行』と、『乗り物の使用は不可』ぐらいしか、やっちゃいけないことって無いチャオよ…。ルールブックに『自分の身長以上の歩幅での走行は認めない』とでも書き加えろって言うチャオか？」
「ぐぬぬ…」

それをきいて、さっきからなんとも間抜けなポーズで静止している謎の生物（自称宇宙人）が追い討ちをかけてくる。

「そういうことだ。我は先に行かせてもらう。あばよ、まきぐそ。…うん？負け猫だったか？」
「『負け犬』の事ですか？」
「そうそれだ。あばよ負け犬」

あくまでも無表情無感情の謎の生物（自称宇宙人）は、そのまま走り去って（？）いった。
数秒後、トップの選手がゴールしたという合図のファンファーレが鳴り響いた。
完全に戦意を喪失した三人が何とかゴールに辿る着いてみると、そこには表彰台の一番上で首にメダルを下げた謎の生物（自称宇宙人）がいた。
主な記録としては、完走タイムが０：２０：３７。完走する際に要した歩数が１２歩。ともににぶっちぎりで最高記録更新である。

「これで残るはあとひとつ。次の階級を制覇すれば我らが欲するメダルが手に入る」

そういい残し、謎の生物（自称宇宙人）は姿を消した。

「…ふっ…さすがのこの私も今回ばかりは完敗だ。だがっ！この借りは必ず！」
「ふぅ…つかれました。さっさと僕は帰らせてもらいます」
「ば…化け物だ…」

三人、今の気持ちを思い思い吐き出し、謎の生物（自称宇宙人）と同じようにその姿を消した。
チャオレンジャーを完膚なきまでに粉砕した直後、謎の生物（自称宇宙人）はすぐさま最後のレース、つまりこのガーデンが誇る最強のランナー、ライトカオスへ挑戦状をたたきつけた。
結果、ライトカオスをもいとも簡単に撃破した謎の生物（自称宇宙人）は、欲しがっていたメダルを手に入れる事ができた。
しかし、当然メダルに彼らが思っているような特殊能力は無い。その日の夜、色々試行錯誤（回したり、かじったり、あぶったり、愛を注いでみたり、etc…）してみたが、なにもおきなかった。
謎の生物（自称宇宙人）がレッドの下へ乗り込んできたのは、翌日の朝の事である。

―チャオガーデン・午前九時―

「どういうことだ。昨夜、色々試行錯誤（回したり以下同文）してみたが、何も起きん。どうすればこの星を手に入れることができるのだ？」
「しらーん。というかそのメダルはただの飾りだと親切にも教えてやったはずだぞ？わたしは貴重なスリーピングタイムを昨日に続き二回も邪魔されてとても不機嫌である。さっさと帰ってくれたまえ」
「ばかな、ありえない。我らの情報が間違っているなど…！そ、そうか！」
「…やっとわかってくれたかね？」
「『カラテ』だ！」
「なに？」
「ココにはもうひとつ、カラテという競技があったはず！きっとそこで手に入るメダルも入手する事により、初めて効果が現れるのだな！」
「そのような事あるわけなかろう。時間を無駄に浪費したくなければ考えを改めるがよい」
「もうすぐこの星がわれらのものに…」

一人で勝手に納得し、謎の生物（自称宇宙人）は今度はカラテ会場へ向かった。
史上初、宇宙人にたたき起こされた地球人（チャオ）第一号となったレッドは。

「…まぁよい！借りを返す機会が早々に訪れたというものだ！そうと決まれば早速チャオレンジャー出動だ！」

他の隊員をたたき起こしにかかった。　　　次回へ続く。かも。